A's編
第三十三話 中
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コールからさほど時間をおかずにクロノさんが通信に応えてくれた。携帯と似たようなものだから、忙しいときは出られないと言っていたが、どうやら今はタイミング的にも問題ないらしい。とはいっても、クロノさんのテレビ電話の画面のようなものから見える背後はとても忙しそうにバタバタしているが。
どうやら、これは手短に用件を伝えたほうがよさそうだ。
忙しそうなクロノさんの邪魔をしてはいけないと思い、単刀直入にアリサちゃんたちへの事情説明の許可について話した。
「いくつか制約がつくが、基本的に説明してもらって構わないよ」
いくぶん渋られるかと思われたが、あまり間をおかずに帰ってきた答えは意外なことに快諾だった。少しの制約ということが気になるところではあるが、クロノさんの性格を考えれば、あまりきつい制約というわけではないだろうと思う。
実際、そのあと説明を受けたのは、基本的に魔法世界のことは話しても構わないが、事件のことは深いところまでは話さないこと。話すのは二人だけにとどめること、などだった。残念ながら僕のいる地球という世界では魔法というものはファンタジーで、本の世界にしかないもと考えられている。
僕みたいに実際に見ていれば信じる人もいるだろうが、子どもが魔法があるといったところで真に受けるのは本当に子どもだけだろう。何より、あの二人が秘密にしてほしいことを勝手に他人に話すとは思えない。だからこそ、クロノさんから言われた制約に対して、否と答えることはなかった。
「今から行くのかい?」
「そうですね、できれば今から行こうかと思います」
これ以上遅くなってしまうと明日以降にしなければならないとは思うが、そうなるとアリサちゃんの僕への怒りがすごいことになっていそうだ。そもそも、アースラにいるからこそメールは受信できないが、地上に出てしまえば、さらにメールを受信しそうで怖い。
僕の心情を知ってか知らずか、クロノさんは僕が即答したのを見て、少しきょとんとしてくつくつと笑い始めた。
「失礼、いつも冷静だとおもっていた君がそこまで焦るとは、よほど怖いお友達なんだな」
「否定はしませんよ」
僕はくすくすと笑いながら答えた。アリサちゃんは、意外と怒ると怖い。美人は睨まれただけで怖いというが、それに近いだろうか。表情は幼いのだが、顔立ちの造形は、可愛いのだから怒った時の表情はそれはそれは威圧感にあふれていた。
「なら、早くいったほうがいいな。僕から転送装置の申請はしておくから行くといい」
「いいんですか?」
「今の状況で地上への転送装置を使うような人間はいないよ」
半分諦めたような表情でクロノさんは笑う。もっとも、それは乾いた笑みというのかもしれないが。だが、これは好機でも
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