第壱章
九……利モ無シ害モ無シ
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村正は左近の後ろに乗せてもらっていた。本当は自分の足で移動しても良かったのだが、左近に半ば強制的に乗せられたのである。
「落ちそうで怖い、君に掴まっても良いかな?」
「あ、ああ、いいぜ」
「では……」
二人乗りなど初めてで、掴まっていいかと聞いたはいいものの、どの様にして掴まればいいのか村正にはわからなかった。なので、左近の背に抱きつく様に掴まると、その背がビクリと跳ねた。
「ちょ……ちょ、村正ちゃん!?」
「な、何か問題でも……」
視線は前に、左近は慌てふためく。無理もない。女子に抱きつかれれば、大抵の男は驚くだろう。
村正はよく見れば端正な顔をしている。どこか育ちの良さそうな美しさ。
「ああいや、そのー……」
何故だか気まずい雰囲気になり、何となく二人は無口になった。村正は何故慌てられたかを考えて首を傾げ、左近は尚も抱きついたままの村正の感触に頬を染めては首を振り。
そうこうしているうちに、佐和山城に着いたようだ。
「ここが……佐和山城」
「み、三成様の城だぜ! 三成様はすげえんだ!」
「うん……大体わかるよ。三成という男が、どれだけ秀吉さんの近くにいるか、どれだけ信用されているかも」
城を見上げたまま笑う村正。二人は佐和山城の門の前に立つ。
程なくして門は開いた。それと同時に、見えたのはあの時の青年。
「……あっ、三成さん」
「貴様は、あの時の……!」
石田三成だ。
秀吉の血を頂く時に斬りかかった、あの青年。
三成はまた、刀を抜いて村正に斬りかかろうとした。そこへ、左近が割り込む。
「ちょい待ち!! 村正ちゃん、三成様と会ったことあんの!?」
「まあ……ね。あはは」
「秀吉様の暗殺を企てた輩だ。早々に消さねばならん」
「はぁ!? 秀吉様の暗殺ゥ!?」
「違うんだ! これは違う! 御本人様公認の吸血という名の食事だ!」
吸血、と聞いて場は凍りついた。村正ははっとして口元を押さえるが手遅れである。
「き、吸血って……村正ちゃん、何者?」
「名前の通りだ、よ。妖?血刀、妖刀村正。それが僕さ」
血吸い刃を左近の眼前に掲げる。一歩後ずさる彼を見て、村正は嬉しそうにからからと笑った。
「そんなに怖がんなくても!」
「いやあ、怖がっちゃねーんだけどさぁ」
「貴様……男ではなかったのか?」
「そこなんだ。そこが分からない。僕は元々女だったのか、昨晩何かが起きて女になってしまったのか」
考える村正は、その後疲れから倒れてしまった。
こうして、しばらくの間は石田軍に世話になる事となった村
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