第十一話
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俺が家を飛び出してからは、妹の家庭教師兼送迎の仕事もしているらしい。
「いや、まあね。気が向いたら帰るよ」
「そんなことをおっしゃらずに。……まあいろいろあったでしょうし、柊様もいろいろと考えがあるとは思いますけど、そろそろ意地を張るのもやめていい頃合いじゃないでしょうか。そう私は思います。……亜須葉様も寂しがられておりますよ」
げ……。
その名前を聞いただけで、俺はどういうわけか戸惑ってしまうんだ。
月人 亜須葉……。
俺のたった一人の、2歳年下の妹。
甘えん坊でワガママで優しくて怒りん坊で素っ気なくて、でも寂しがり屋で泣き虫の女の子だ。
生来の相性の悪さからか俺はアイツがとっても苦手で、でもアイツは俺にやたらとじゃれついてくるんだ。そのせいでどれほど酷い目に遭ってきたか……。そんなこんなで、妹は俺にとって小さいときからのトラウマ的存在となっている。ハッキリ言って大の苦手だし、俺にとっては天敵みたいなもんなんだ。だから出来る限り関わりたくないっていうのが本音なんだ。
こればっかりは十何年もの積み重ねの結果だから、今更どうにもなんないんだよね。もはや遺伝子レベルの苦手意識なのかもしれない。
「ややや、やめてください。亜須葉のことは言わないでくださいよ。アイツは元気にやってるでしょ? うんうん、良かった良かった。それが一番です」
意味不明なことを言って俺は誤魔化す。
十さんはそれ以上は余計なことを言わなかったので助かった。
「わかりました。……ところで柊様。わざわざこんな時間に電話をかけてこられたからには、何かお困りのようですね」
さすが、何年もの付き合いだけのことはある。おそらく俺からの電話だというだけで、どうにもこうにも困った末に電話してきたってわかったみたい。
「う、うん。ちょっとトラブルに巻き込まれてね。今、学校の外にいるんだけど」
「こんな時間にですか。一体、何をされていたんですか? 」
「うんー。まあそれは置いておいてね、今からアパートに帰ろうと思ってもこんな時間だから終電もとっくに出た後だし……。それにお金もないし」
「わかりました。すぐお迎えに参ります。……こちらからの距離もありますので、30分ほどお時間をいただけますか。準備ができ次第、お迎えに参ります」
さすが行動が素早い。
俺は現在地を知らせた。
「あ、それと……」
「なんでしょうか? 」
俺は少し口ごもった後、
「あいつに、亜須葉だけには絶対気づかれないように来てくださいね。これだけはお願いします」
「無論ですよ。ご安心ください」
と答えてくれたので、俺はほっとした。
亜須葉が今の俺をみたら卒倒してしまうのは間違いない。その後
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