暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
不透明な光 3
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潤んだ瞳を彼に向ける。
 「素直な心に従いなさい。それが貴女の道です」
 柔らかな微笑みが、言葉が、レネージュの胸にすぅっと溶けて落ちる。
 ドレスの袖を捲り、腕でぐいっと顔を拭った。
 「これ、村長に渡しておいて」
 「え? ちょっと、レネージュ!?」
 村人に書状を押し付け、白い人に一礼して、レネージュは来た道を引き返した。
 今の状態で歩くのは、正直かなりキツい。
 でも、そんなに長い距離じゃない。

 「不本意だけど、あたしはもうグリークの妻だもの! あたしには義妹を護る権利があるわ!」
 ヘトヘトになりながら辿り着いた屋敷の前で、ずっと踞っていたらしいクーリアにそう宣言した。
 銀色の少女は、その時になって(ようや)く貴族の仮面を外し、泣き喚いた。


 それから少し先の未来。
 貴族籍を没収された未亡人が、漁業盛んな小さな村で銀髪の幼い双子兄妹と戯れていた。
 半分に割れた薄い緑色の貝殻のネックレスをそれぞれの首に掛けた双子は、木の上から望む水平線が大好きだったという。


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