暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
不透明な光 3
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兄のガラスが補ってた。少し強度が増した訳だが、外枠の脆さは変わってない。だから、俺の力を貸してやろう。アンタの体が壊れないように、一時的に外枠を支えてやる。俺と契約しろ」
 「契約?」
 「俺が力を貸す代わり、アンタは幼馴染みを絶対、確実に助ける。意味は解るよな?」
 絶対、確実に。今後も少女に危害が及ばない救助。
 それは
 「……兄を、殺せと言うの?」
 「アンタにできるかな?」
 兄は悪魔に殺されたと言った。
 それなら、あれは兄ではない。
 「契約します」
 迷う必要なんて、無い。
 「……成立した。行け」
 その一言でクーリアは覚醒した。
 長く眠っていた所為で筋力が落ちている筈の体は、信じられないほど自由に動かせた。部屋に掛けられた鍵も、体当たりであっさり壊せた。
 普段は操られているらしい使用人が、廊下のあちこちで糸が切れた人形のように倒れている。
 異様な空間を走り抜けて厨房に向かう。其処で、鋭く磨かれた包丁を手に取って……。


 「私は貴女を助ける為に、その声と契約しました。レネージュ様には大変申し訳ありませんが、兄が両親を手に掛けてそれを隠し、外部との連絡を遮断した所為で、私達一族は貴族としての役目を放棄した形になります。位を返上する事になるでしょう。ですがその前に、一族の財産を可能な限り村の復旧に役立てる署名を遺します。どうか、それを持って村へお帰りください」
 「クーリアは? あなたはどうなるの?」
 「村の復旧は貴女を助ける契約の内。船が直るまでは、此処で一族最後の一人としての役目を果たします。事実はどうあれ、兄を殺した罪も償わなければなりません。その後は……両親と兄の元に召されるでしょう」
 「そんな……っ」
 クーリアは動揺するレネージュの前に立ち、ふわりとその肩を抱き締めた。
 「貴女と過ごした時間は、私の大切な宝物です。兄にされた事は忘れようが無いと思いますが、どうか、幸せになってください」
 「……クーリア……!」
 レネージュもクーリアの体を抱き締めた。
 (しばら)くの間泣き崩れ……落ち着きを取り戻してから、預かった書状を手に、レネージュは屋敷を去る。
 クーリアは屋敷の前に立って、小さくなるレネージュの背中をずっとずっと見送っていた。


 「あれ? レネージュ?」
 ふらふらと覚束ない足取りで戻って来たドレス姿のレネージュを見つけた村人が、どうしたんだ? と彼女に駆け寄る。
 レネージュは暗い表情で俯いたまま。
 「……あたし……」
 屋敷の前で手を振っていた少女の姿が頭から離れない。
 書状をぎゅうっと握り締め、唇を噛んだ。
 「迷っているのですか?」
 真っ白い服で全身を覆う黒髪の男性が、村人の横に立って問い掛けた。
 レネージュは
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