カミテにいる女
五本目★
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が混乱していて、整理がつかない。他人を気遣う、余裕がない。
そしてあつい労いの言葉と共にその日の活動は解散となった。部長だけは戸締りや忘れ物を確認するために客席に降りていく。
「…なんかあんた大人しくない?袖幕のとこでキモい虫でも死んでた?」
坂田が日紅をちらりと見て言う。
「…さっちゃん」
「なあに?」
「今日来てる人ってこれで全部?」
「え?助っ人も含めてってこと?うん、これで全員だけど」
「ちなみに上に部外者の人が入ることってできるの?」
「上?あの階段上ったとこ?ムリ。いったん外でなきゃだし、鍵は今うちらが持ってるもん」
「…ふーん…」
「なに?あんたヘン。顔色も悪くない?本当に変質者でもいたりした?」
「いないよ。変質者は…」
そう、もう変質者でも誰でもいいから、人がいてくれたほうがよかった。そうしたら、まだ上から石が落ちてきた説明がつく。
「さっちゃん、カミテ、ってどこ…」
「ちょっとー!坂田!」
日紅の言葉は部長の声に掻き消された。
「なんですか、部長」
「あんたねー、掃除!ちゃんとやってたんでしょうね?こんなバカでかい石、どうやったら見落とすのよ」
部長がこちらに歩いてくる。手に何か持って。
近づい、て…。
ぐにゃりと日紅の視線がぶれる。
「石?」
「ほら。どっから持ってくるのよこんなモン。上手のソデに…えっ!?」
「日紅!」
悲鳴のような、自分の名を呼ぶ声がどこか遠くで聞こえた。
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