暁 〜小説投稿サイト〜
東京百物語
カミテにいる女
五本目★
[4/4]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
が混乱していて、整理がつかない。他人を気遣う、余裕がない。



 そしてあつい(ねぎら)いの言葉と共にその日の活動は解散となった。部長だけは戸締りや忘れ物を確認するために客席に降りていく。



「…なんかあんた大人しくない?袖幕(ソデ)のとこでキモい虫でも死んでた?」



 坂田が日紅をちらりと見て言う。



「…さっちゃん」



「なあに?」



「今日来てる人ってこれで全部?」



「え?助っ人も含めてってこと?うん、これで全員だけど」



「ちなみに上に部外者の人が入ることってできるの?」



「上?あの階段上ったとこ?ムリ。いったん外でなきゃだし、鍵は今うちらが持ってるもん」



「…ふーん…」



「なに?あんたヘン。顔色も悪くない?本当に変質者でもいたりした?」



「いないよ。変質者は…」



 そう、もう変質者でも誰でもいいから、人がいてくれたほうがよかった。そうしたら、まだ上から石が落ちてきた説明がつく。



「さっちゃん、カミテ、ってどこ…」



「ちょっとー!坂田!」



 日紅の言葉は部長の声に掻き消された。



「なんですか、部長」



「あんたねー、掃除!ちゃんとやってたんでしょうね?こんなバカでかい石、どうやったら見落とすのよ」



 部長がこちらに歩いてくる。手に何か持って。



 近づい、て…。



 ぐにゃりと日紅の視線がぶれる。



「石?」



「ほら。どっから持ってくるのよこんなモン。上手のソデに…えっ!?」



「日紅!」



 悲鳴のような、自分の名を呼ぶ声がどこか遠くで聞こえた。
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ