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東京百物語
カミテにいる女
五本目★
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「ややや、だって、無理!無理無理無理!お化けとかホント無理!」



「タンスから出る手は平気だったんでしょ?なら講堂に出るお化けだって平気よ平気平気」



「平気じゃない!無理ぃ〜!」



「大丈夫よ、今まで誰も見たことがないから。そもそもあんた上手も下手(しもて)もわかんないでしょ?」



「わっかんないけど、むぅりぃい〜!」



 日紅は既に半泣きだった。



「一回始めたことを途中でやめるのはお母さん許しません。と、言うことで、早くここから出たきゃ死ぬ気で掃除することね」



「お母さま〜そんな殺生なぁ〜!」



 しかし日紅の嘆きは無視された。えぐえぐと泣きながら日紅は再び木張りの床と向き合う。床はワックスで固めてあるにも関わらず、所々のささくれ立ちが目立つ。気を付けないと指の皮膚も引っかけてしまいそうだった。



「さっちゃあん、なんか楽しい話してよー気を紛らわせないとあたし死んじゃう」



「大げさな。あんたってどうしてそんなに怖がりなんだろーね。んー…じゃあねー…今度みんなでどっか旅行いかない?」



「旅行!?いくいく!」



「沖縄、北海道、広島、京都…どこがいい?」



「あ、京都はお姉ちゃんがいるからたまぁに行くよ」



「え、京都遠くない?いくら?」



「新幹線で…片道一万四千円ぐらい。確か」



「えっ、じゃあ往復約三万!?無理よ…」



「お姉ちゃんいるから宿泊費はタダだけどね」



「それでも高い!」



「北海道とか沖縄なんてもっと高いんじゃない?」



「ううむ…そうか。でも旅行…せっかくの旅行だからね、あたし出すときは出すよ!」



「あたしもさっちゃんと同じで出すときは出す派。無い袖は振れないけど」



「同じく。今年の冬はみんなで長野にスノボーでしょ?とりあえずはそれで我慢するか…」



「どこに行くにしても、まずちゃんとした計画先に立てよっか!」



「そうだね」



 そんな話をしていたら、時間は思ったよりはやく過ぎたようだった。



「はい、みんなお疲れ様ー!」



 部長のその声で日紅は我に返った。



「あーずっと屈みっぱなしだったから腰も膝も痛いわ〜」



 横で坂田が伸びをする。日紅も同じように立ち上がり、体の埃を払う。確かに、体重をかけ続けていた膝が赤くなっている。皆は部長のいる舞台上の右側、客席から見て左側に向けて集っているようだった。日紅も坂田とともに
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