不透明な光 2
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おめでとうと言っていたのだろうか。良い仕事をしなさいと、女神アリアの名を掲げて。
知る事と知らない事。それがこれほどまでに見える世界を変えてしまうとは……教会に居るだけでは気付かなかったに違いない。
「……少女レネージュに幸福が訪れますように……」
暗闇の中、波音が足元で反復した。
朝が来た。レネージュの瞳に眩しい太陽の光が映る。
映るだけ。見てはいない。
一晩中、泣いても叫んでも、グリークはレネージュから離れなかった。
出血が止まらなくても関係無しに貫いて、掻き回して、何度も中に出した。
人形のように指先すらも動かなくなるまで続いたそれは、レネージュの意思を壊しかけている。
「……レネージュ。いつまで寝てるつもりだ?」
一度は部屋を出ていた銀髪の男が愉しそうに目を細めて、様々な体液で汚れたベッドに仰向けで沈んでいるレネージュの体を見下ろした。
四肢を伸ばして顔を横に向けている彼女にはもう、怯えるだけの余力も無い。
「安心しろ。いきなり全部は喰わないさ。回復させて、喰って、また回復させて……ゆっくりゆっくり苦しめてやる」
ベッドに乗り上げ、彼女の頬を両手で覆って軽く口付けをする。
突然、部屋の扉がバタン!と大きな音を立てて開かれた。
「……!?」
グリークが体を起こすと、ネグリジェ姿の銀髪の女の子が剣呑な目付きで、手に持った包丁を腹の辺りに構え……
「死になさい! 我が一族の名を汚した亡霊よ!!」
「クーリア……!?」
凄まじい勢いでグリークに走り寄り、躊躇い無くその心臓めがけて刃を突き出した。
驚きで固まってしまったグリークは、まともに一撃を受けて……ベッドに仰向けで倒れた。
グリークの腕が、レネージュの胸を叩く。
「……っ、クー、リア……な、ぜ……」
「お黙りなさい、兄の姿をした悪魔! よくも兄を……私を汚してくれましたわね! 父さまや母さままで殺して!」
波打つ長い銀髪を振り乱して、少女は大声で叫ぶ。
雪の影のような色の目には大粒の涙。ネグリジェから覗く白い肌には、無数の鬱血跡があった。
「お、れは、お前を 愛 して……」
「まだそのような戯言を! 関係無いレネージュ様にまで非道な行いをしておいて、愛を語れば赦されるなんて思わないで!」
「クー……リ ア っがぁ!!」
ベッドに乗った彼女は、少女のものとは思えない力でグリークの心臓に立てた刃を抜き、再び振り下ろす。飛んだ赤い雫が、レネージュの頬に張り付く。
「クーリアああぁ……!!」
グリークが少女に手を伸ばして絶叫し、パタリと息絶えた。涙が浮かぶ目を見開いたまま。少女の名前の形で口を開いたまま。
「はぁ……っ、はぁ……。レネージュ様…… レネージュ様!」
事切
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