暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
不透明な光 2
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立った様子のグリークは、火傷するにも(かかわ)らず右手でネックレスを鷲掴み、肉が焼ける音を立てながら強引に鎖を引き千切った。
 レネージュの首筋に赤い線が滲む。
 双子の気持ちを。彼らの母親が作ってくれた贈り物を。グリークはゴミを棄てるようにベッドの外へ放り投げる。
 直後、バキ! と、貝殻が割れる音がした。
 「……っなにを……なにをするのよ、グリーク! 大切な物なのに!!」
 額から汗を垂らしつつ苦悶の表情で右手を見ていた彼は、レネージュの怒りを受けて……にっこりと微笑んだ。
 「お前が苦しむ様は、本当に心洗われるな、レネージュ。もっともっと苦痛に嘆いて、俺を癒してくれよ」
 「いっ! あっ……!?」
 火傷した右手がレネージュの最後の砦を無理矢理引き裂き、左膝を持ち上げて足先を自らの肩に掛け、大きく開いた股の間に腰を寄せた。弛んだローブの隙間から熱く硬いものが直接触れている。
 レネージュの全身が恐怖で強張った。
 「や、やだ……」
 歯をカチカチと鳴らして怯える彼女の頬に、触れるだけの口付けを落として……
 「堕ちろ」
 「いやああッッ……!!」
 濡れてない。解されてすらいない。一度も異物を挿れた経験が無い場所に、グリークが乱暴に突き刺さる。
 裂かれた激痛と容赦無い圧迫感で喉を引き攣らせたレネージュは、真っ黒に染まった視界で黒い人の言葉を思い出した。
 『うっかり殺されても恨むなよ』
 今になって実感するのは遅いのだろう。レネージュはこの男に殺される。
 何故? 何故、こんな事になるの?
 どうして殺されなきゃいけないの?
 「レネージュ……ッ」
 遠くでグリークの苦しげな声が聞こえた。
 それ以上に、体の内側がギチギチミシミシと軋んで壊されていく音がする。
 「……た……すけ、て……」
 絶叫と悲鳴と嗚咽と呻き声の間に紡いだ言葉は、ただただ獲物を味わうだけの獣に通じはしなかった。



 「うん、そうだよ!」
 夜の海辺で、黒髪の少年は嬉しそうに笑って答えた。
 「すごくきれいなお姉ちゃん。しあわせになれるかなぁ? なれると良いなぁ」
 恐らく結婚の意味もまだ理解していないだろうに、少年は純粋に少女の幸福を願っている。
 少年も、少年に慕われている少女も、とても良い子だ。
 できる事なら無傷で助けてあげたいと思うが、それは難しいだろう。
 彼女は彼がどういう状態なのか、知らないのだから。
 「貴方も彼女の幸せの一翼。何処にどう存在していても、彼女の幸福をお祈りしてあげましょう」
 難しい言葉だったかな。少年は首を傾げ……にこっと笑って家族の元へ駆けて行った。
 海の村人達は、何も知らずに祝宴を開いている。明日からの準備に心を踊らせて。
 何も知らなければ、自分も素直に
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