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黒魔術師松本沙耶香  紫蝶篇
23部分:第二十三章
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のは悪魔であった。沙耶香と同じく背徳の罪を楽しむ彼女を示すカードであった。悪魔のカードは誘惑や危険な恋、弄ぶことを現わすのである。
 六枚目に出たのは力。あくまで自らの欲望と願望を目指す彼女の心を現わしていると言えた。即ち彼女がしなければならないことはその力で己の欲する全てを掴むということである。
「ああ見えて頑固だからね」
「全くです。しかしこのカードはまた」
「相変わらず見事に現わしているわね」
 沙耶香は述べる。
「完璧に彼女よ」
「そうですね。そして七枚目は」
 出て来たのは運命の輪の逆であった。不安定に悪い方向、人付き合いなぞ必要としない彼女にとってこれも当然であった。
 八枚目は魔術師。そのままであった。ただし彼女にとっては貰うのではなく奪うものである。その為の蝶達であるからだ。
 九枚目は女教皇。今彼女は冴え渡り強くなっているということだ。女教皇は包容力や洞察、閃きを現わす。彼女にとっては洞察に閃きであった。あの青い目はまさにそれであるのだ。
 十枚目は仕事運、即ち魔術師としての彼女そのものだがこれもまた今の彼女そのものであった。出たのは皇帝であった。絶大な力を持って君臨する皇帝の如き強さを示す、彼女の今であった。
 十一枚目は審判の逆であった。簡単に言うならば今までの行いに対しての審判である。それが逆に出たということは彼女にとっては別に関係はない。これも友人というものがない彼女だからである。だからこれは最初からそんなものはないということである。
 十二枚目だが面白いものが出た。彼女、即ち依子が気付いていない敵。それに戦車の逆が出たのだ。
 このカードはまさに正反対になる。正ならば勝利、逆ならば敗北であった。沙耶香はふとそれを見て気付いたことがあった。
「あの蝶ね」
「蝶?」
「その話しは後でね」
 すぐには答えずに今は伏せておいた。
「それでいいわね」
「わかりました。それでは」
「ええ。いよいよ最後ね」
 鍵である真ん中のカードだ。今それが開かれた。
 出たのは隠者であった。そのカードを見て沙耶香はまずは眉を顰めさせた。
「隠者」
「成程」
 しかし速水はそのカードを見てニヤリと笑った。まるで何かを感じたかのようにだ。
「隠れていますか」
「どういうことかしら」
「いえ、今の彼女ですよ」
 その隠者のカードを右手に持ちながら沙耶香に述べる。
「隠者なのです」
「隠れているということね」
「はい。今彼女はこのマドリードにいてマドリードにはいません」
「どういうことかしら」
 沙耶香はその言葉を受けて考える顔を見せてきた。


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