不透明な光
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き捨てるように呟いて、うっかり感触を思い出してしまう。
耳まで赤く染め、身悶えつつ頭を抱えた。
「……っ、初めてだったのに……!」
容姿だけは一級品の幼馴染みと、脅迫紛いの結婚。人前で恥ずかしい口付け。
とんでもない最低な式だ。このドレスだって、できれば着替えてしまいたい。
そう思って胸元に手を運び……
「おい、アンタ」
「…………っ!?」
突然響いた声に驚いて顔を上げた。
正面にある、そろそろと黒くなり始めた空を切り取る縦長な窓枠に、いつの間にか黒い人影が立っている。肌も髪も、着ている服まで全てが真っ黒。
唯一、目だけがレネージュの髪と同じような紅色だ。
「だ、誰!? なんで窓……此処、三階よ!? バルコニーも無いのに!?」
レネージュが慌てて立ち上がっても、黒い人影は微動だにせず冷静に言葉を続けた。
「銀髪男と本気で結婚したいと思ってんのか?」
「銀髪? グリークの事?」
「名前なんぞ知らん。ただ、本気じゃないなら止めとけ。喰われるぞ」
喰われる? 妙な言い回しだなと、レネージュは首を傾げる。
「あたしだって、別にアイツと結婚したい訳じゃないわよ。でも、村の死活問題なんだもん。仕方ないじゃない」
ぷぅっと頬を膨らませると、相手はほんの少し目を丸くして笑った。
「なんだ。人身御供か」
「そうだけど……改めて言葉にされると、なんとなく虚しくなるわね」
「人間問題に絡めて手に入れた、か。此処のヤツはそこそこ賢いらしい」
クスクスと肩を揺らして笑ってる。何が面白いというのか。
「生憎、俺達がどうにかできるのはアンタ一人に限られてる。今、この場で選んでもらうしかないが……喰われるのと逃げ延びるのと、どっちが良い?」
「? 意味が解らないから、答えようがないわ」
「生きて村を見捨てるか、死んで村を助けるか」
黒い人は紅い瞳でじっとレネージュを見つめ、冗談を感じさせない声色で問い掛ける。
レネージュは暫く考え……
「生きて村を助けたい」
真面目に答えた。
「強欲だな」
「その為に此処に居るのよ、あたしは」
黒い人は口元に薄く笑みを浮かべる。
「なら、多少の苦痛は我慢しろ。さすがに一日二日で喰い尽くされる事は無いだろうが、間に合うかどうかは運次第。うっかり殺されても俺を恨むなよ」
「だから、いったい何の話を……って、ちょっと!?」
影がふわりと飛び上がって、外側に落ちる。焦って窓から顔を出すが……影は消えていた。
「……な、なんだったの、今の?」
喰われるとか死ぬとか生きるとか、なんだか物騒な事を言っていた。
レネージュは不気味なものを感じつつ、ベッドに戻って座り直す。
「でも……、ちょっと格好良かったかも
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