不透明な光
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着付けてくれた近所に住むふくよかな体型の婦人が、加工した貝殻のネックレスをレネージュの首に掛ける。表面を丁寧に磨いて独特の光沢を与えられた貝殻が五枚、薄く焼けた首周りを美しく彩った。
「さあ、行こうか」
可愛い盛りの子供達を思い浮かべている間にヴェールを被せられ、背中を軽く押される。
仕方ないとは言え、容赦も無い。
「……はーい」
ふわりと咲いたチューリップを逆さにしたような形のスカート部分を片手で摘まみ、もう片方の手にブーケを持って、教会の礼拝堂へ向かう。
式は村の様式とも貴族の様式とも違う、一般的な形式で行われる。
貴族式で行う場合は準備期間を長く取らねばならないし、村の様式では簡素過ぎるから……が、理由らしい。
これにはレネージュも納得した。
村の様式は、結婚する男女が村の衆に見守られながら手を繋いで、二枚貝の上を新郎が。下を新婦がそれぞれ同時に海へ放り投げる……だけ。後は法に則って役所で籍を書き換えるのみ。非常に質素かつ味気なかった。
堅苦しい場所で知らない人間に囲まれて挨拶に終始するなんて面倒な事もしたくない。
しかし。
「顔を上げろ、レネージュ」
傲慢を絵に描いたらこの男になるな。
そう確信したレネージュは、言われた通りに大人しく顔を上げる。純白のヴェールを除けられ、夫となる男の顔を正面からじっと見据えた。
海の近くで暮らしているとは思えないほど白い肌に、透き通るような青みが混じる銀の髪。長い睫毛から覗く海の碧色は、黙っていれば綺麗だと思う。黙ってさえいれば。
その顔が視界を埋め尽くし、紅を塗ったレネージュの唇を塞ぐ。後頭部に回した手が逃げ道を奪って、男の舌が無理矢理口内に侵入した。
「っ……んん!?」
レネージュと同じ純潔を示す白を纏う男は、軽く触れるだけで良い筈の口付けを、深く長くねっとりと、厭らしい音を立てて味わった。
「……っ、……!」
息苦しさで倒れそうになるレネージュの腰を引き寄せて支え、男はうっとりと微笑む。
神前で誓いを立てた夫婦は肩を寄せ合い、関係者に祝福されながら、ゆっくりと礼拝堂を後にした。
「なっ……、んじゃありゃーッッ!」
レネージュは怒りを込めてヴェールを床に叩き付ける。
ヴェールはふぁさ……と柔らかな絨毯の上に落ちただけで、妙な空振り感が余計に腹立たしい。
教会の外でブーケを村の衆に向けて放り投げた後、そのまま御曹子とは別の馬車で屋敷に連れて来られた。天蓋付きのベッドしかないあからさまな寝室だが、外はまだそんなに暗くもない夕暮れ時。男が来るまではそう緊張することもない。
ベッドの端にどっかりと腰を下ろし、腕を組んで「ふん!」と開き直った。
「グリークめ! 人前でする事じゃないでしょ、あんなの!」
吐
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