不透明な光
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われ、村が所有する船総てが使用できない状態にまで破壊されてしまい、困った村人に御曹子が突然こう告げたのだ。
『村の損害を総て引き受けます。代わりに、レネージュを私に下さい』と。
父親からその話を聞いたレネージュは、口を開けたまま目を点にした。
彼女の認識では、喧嘩友達ですらない相手だ。その提案はあまりに突拍子もなく、最初は意味不明だった。そういう話にまるで興味が無いと言えば嘘になるが、相手が悪すぎる。
当然、レネージュは断固拒否の構えを取った。
ところが、話を聞いた翌日に現れた御曹子はレネージュの耳に唇を寄せて、こう囁いたのだ。
『ザマーミロ』と。
レネージュに好意がある訳ではない。彼女を貶める材料に結婚を選んだだけ。しかも、村稼業が危機に陥っている事まで利用した。
御曹子の提案を受け入れてくれと、村人達は必死になって訴える。
海辺で上質な山菜が採れるのなら、レネージュも迷い無く御曹子の顔面にウニの殻でも投げ付けて高笑いしてやっただろう。
が、現実はそう優しくない。
財政が圧迫されて生活が困窮していく様を直に見て……頷くしかなかった。
「あ、レネージュお姉ちゃん!」
「ホリィ」
日焼けして浅黒くなっている上半身を潮風に晒した黒髪の男の子が、両手一杯に色とりどりの貝殻を持ってレネージュに駆け寄った。
「あのね。これね。しあわせのかいがら、なんだって。ネックレスにして、首にかけて、神さまにお祈りすると、一生しあわせになれるんだよ!」
「ホリィが集めてくれたの?」
「うん! ボクとエミィで集めたの」
見れば、教会の入口扉の影から黒髪の少女がチラチラと恥ずかしそうにレネージュの様子を窺っていた。
無邪気に笑うホリィの手には、所々擦り傷や切り傷、刺し傷まである。
貝殻は色こそ美しいが、欠けた部分は鋭利な刃物同然だし、加工前にはトゲだってある。拾い集めて抱えて持つなんて、相当痛いだろうに。
「ありがとう、ホリィ。エミィにも伝えて。あたしが喜んでたよって」
「うん! 式に間に合うように、お母さんにおねがいして来るね!」
体を反転させ、駆けて行く小さな背中を見送り……溜め息を吐く。
まだ五歳になったばかりの双子の気持ちまで欺いて、レネージュは好きでもない男と結婚する。
村稼業を再開させる為とは言え、晴れ晴れしい気分にはなれなかった。
「ほんと、女の子らしくなったものねぇ」
「………。」
御曹子側が用意したという純白のドレスを着せられ、レネージュは何とも言えない気分になる。
サイズも形の好みもど真ん中。採寸した記憶は無いし、好みを尋かれた覚えも無いのだが。肌触りの良さまで計算されているのが、微妙に気持ち悪い。
「じゃ、これを付けて」
ドレスを
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