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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百七十一話 奔流
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、要塞奪取直後に有った不機嫌さは消えている。今の司令長官はただ静かだ、正面の大スクリーンに映った大まかな星系図を見ながら何かを考えている。

「先行するケンプ艦隊より報告! 反乱軍の哨戒部隊と接触!」
オペレーターが声を張り上げた。回廊を抜け出てからこれで四度目だ、艦橋の空気が緊張する事は無い。司令長官も微かに眉を顰めただけだ。
「随分とこちらを気にしていますな」
「民間人を警護している艦隊、そしてフェザーン方面の反乱軍に我々の位置を教えているのでしょう」
「反撃のタイミングを計っている?」
「ええ」
リューネブルク大将と司令長官が話している。

シュトックハウゼン提督からの報告ではイゼルローン要塞に居た艦隊は二個艦隊だった。ヤン・ウェンリーの第十三艦隊と増援部隊だろう。司令長官はその内の一個艦隊がハイネセン方面に撤退し残りの艦隊が民間人を安全な所に運ぶため別行動をとっていると考えている。我々参謀達も同意見だ。

「どのあたりで反撃が有ると想定していらっしゃるのです、ずっと考えていたようですが。教えて頂きたいものです」
リューネブルク大将が興味津々の表情で言うと司令長官が微かに苦笑を浮かべた。
「民間人を警護している艦隊が何処に向かったか、何処で分離したかで違ってきます。多分アルレスハイム方面に向かったと思うのですが……」
「こちらがティアマトに向かっていると知れば……」
「ええ、アルレスハイムで分離してパランティア、アスターテに出るでしょう。となれば早ければダゴン、エルゴン辺りで反撃が有る。前後から挟撃を狙うと思います」
リューネブルク大将がスクリーンの星系図を見ながら二度、三度と頷いた。

「しかし二個艦隊です。相手を侮るわけでは有りませんが油断しなければ問題は無いのではありませんか?」
思い切って訊いてみた。味方は六個艦隊、三倍の兵力だ。敗けるとは思えない。参謀達の中にも頷いている人間がいる。司令長官がふっと息を吐くのが見えた。不安要素が有るのだろうか。

「決戦を挑んでくれれば良いのですけどね。時間稼ぎをされると危ない。フェザーン方面の反乱軍が来るかもしれません」
艦橋にざわめきが起こった。そんな事が? 可能だろうか……。フェザーンからダゴン、エルゴンはかなり遠い。徐々に兵力を擂り潰してしまうだろう。とても時間稼ぎが有効とは思えない。

「その場合ヤン・ウェンリーは戦場を少しずつシヴァ、ジャムシード方面に誘導すると思います。そしてフェザーン方面から駆け付けた反乱軍と協力して我々を撃破する」
思わず唸り声が出た。可能かもしれない。我々を撃破した後で追ってきたメルカッツ副司令長官率いるフェザーン方面軍と戦う。時間的な余裕は無い、疲労も蓄積している筈だ。だが勝てる可能性は有る。

「如何なさいます?」
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