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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百七十一話 奔流
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私が納得していないと思ったのかもしれない。アイランズが最悪の場合はカールセン提督がハイネセン近郊で帝国軍を足止めしその背後をヤン提督が衝く事になると説明した。そう上手く行くのだろうか……。

「フェザーン方面はビュコック司令長官の指揮の下損害を出してはいますが秩序を保って後退しております」
「それで、この状況から逆転は可能かね」
私が問うとボロディンの表情が歪んだ。
「ビュコック司令長官が何処かで帝国軍を振り切ってハイネセン方面に戻りイゼルローン回廊から押し寄せる帝国軍をカールセン提督、ヤン提督と協力して撃破、その後フェザーン方面から押し寄せる帝国軍を撃破出来れば……」

「各個撃破か、……そのような事が可能かな?」
「……」
返答が無い。ボロディンだけじゃない、トリューニヒト、アイランズ、ホアンも無言だ。殆ど不可能に近い作戦なのだろう。だがそれでも縋らざるを得ない、そんなところか……。

「レベロ、そっちは如何だ?」
「こっちも負けず劣らずの状況だよ、トリューニヒト。フェザーンが占領され帝国軍が同盟領内に侵攻した事で経済は滅茶苦茶だ。為替相場ではディナールは下がり続けている、フェザーン・マルクもディナール程ではないが同様だ」
同盟と帝国では直接の交易は無い、フェザーンが仲介している。つまりフェザーン・マルクは両国が認める共通の通貨なのだがそのフェザーン・マルクが帝国マルクに対して下落している。

おそらくフェザーン人の多くがフェザーン・マルク、ディナールを売り帝国マルクを買っているのだろう。そして同盟市民の多くがディナールを売りフェザーン・マルクを買っているに違いない。つまりフェザーン人も同盟市民も同盟は終わりだと見ているのだ。それは国債の価格が下落している事からも分かる。だがそれでも買い手がつかない……。

「市民はパニック状態だろうな」
ホアンの口調はポツンとした、溜息混じりのものだった。
「酷いものだ。皆が食料品、生活用品の買い出しに走っている。多分帝国軍が近付くにつれてより酷くなるだろう」
ハイネセンは人口が多く自給自足が出来ない。同盟市民が買い出しに走るという事は同盟政府が事態の制御が出来ない、物流の制御が出来ないと市民は見ているのだ。ガバナビリティは失われつつある。

「記者会見をする」
「トリューニヒト……」
「市民が混乱するのは仕方が無い。だが混乱はコントロール出来るレベルまでに抑える必要が有る」
「出来るのか? そんな事が」
我ながら不信感一色の声だった。トリューニヒトが苦笑した。

「何とかするさ。材料が無いわけじゃない。防衛線は破られたが兵力は未だ十分に有る。ハイネセン近郊での決戦になるだろうがやり方次第では帝国軍を追い返す事も可能だ。それにアルテミスの首飾りも有る」
「あれ
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