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ソードアート・オンライン〜Another story〜
SAO編
第112話 ユイの心
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ぁ、今回はオレは全然役に立ててなかったな。……全部リュウキに頼りっぱなしだよ。……ごめんな」

 それは、悔しさや嫉妬という類のものではなく、ただ、申し訳ないと言う謝罪の気持ちと何も出来なかった自分への苛立ちがあった。聞いていたのは、リュウキだけ。アスナもレイナも少し前にいたから、聞き取れていないようだった。

 リュウキは、そんなキリトの言葉を聞いて、キリトの方を向く。

「馬鹿言うな。……勝手に1人で突っ走って、あのままだったら、オレは死んでただろう。キリトたちが来てくれたからこそ、オレはここに生きていられるんだぞ?感謝をしたとしても、謝られる事は無い」
「……」

 キリトはそうは言われてもまだまだ、複雑の様だった。あのユイが消えていく時も、咄嗟には行動出来なかったのだ。リュウキは皆の想いがあったから……、ユイを助けられた、と言っていたけれど、常に先を読んでいるリュウキがいたからこそ、ユイを助ける事が出来たのかもしれない。自身は、パパと慕ってくれているのに……肝心な所で……。

「ユイの前で、そんな顔するなよ」

 リュウキは、キリトにデコピンをした。
 軽くノックバックが発生し、思わずのけぞってしまうキリト。

「いてっ……!?」
「ユイのデータは、キリトのローカルメモリに保存するように設定した。それに、ユイの心はアスナが持っているんだ。あのコは、きっと今もオレ達を見ているよ……そんな顔したら、ユイが悲しむだろう?」
「あ、ああ……そうだな。ん?オレのナーヴギアの方にしたのか?」

 キリトは、少し戸惑いながらそう聞き返していた。リュウキは、軽く笑うと。

「ユイはキリトの娘だ。当然だろ。……アスナでも良かったが、何分時間が無かったからな。咄嗟に出てきたのがキリトのメモリだったんだよ。お前が責任を持って、ユイを連れて帰るんだ。今回はオレはキリトに頼らせてもらう。パパ、なんだろう?キリトは。オレは兄だからな」
「……はぁ、よくできる息子を持ってオレは幸せだよ」

 2人の笑い声が22層の朝日の空へと響き渡る。
 その笑みの中に、アスナとレイナの2人も加わり、更に笑顔が広がっていく。

 そんな中で、アスナの胸元に光るクリスタルが、再び、とくんっと瞬いた。


『……わたし、幸せです。パパ、ママ、おにぃちゃん、おねぇちゃん。……がんばって』


 皆の頭の中に直接。
 微かだけど、そう聞こえた気がした。


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