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異界の王女と人狼の騎士
第一話
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ないみたい。それに、ここで拒否なんかしたら彼女を傷つけてしまうしね。

 だ、誰か来てくれ。じゃないと俺は親友を、そしてその恋人の事を裏切ってしまう。
 それは切なる願いだった。外的要因がなければ、もう止まらない。止められない。

 ???ガタガタ。

 立て付けの悪い引き戸が唐突に開けられた。
 俺たち二人は飛び上がるほど吃驚して、思わず離れてしまった。

 【人の気配がしたら扉を開けたりしないこと。気づかなかったふりをして可及的速やかに立ち去ること。】
 これは第一校舎使用の暗黙のルールだった。それを破った? 知ってか知らずか。

 開けられた扉を見ると、そこには体操服姿の一人の少年が立っていた。

 転校生の如月流星(きさらぎ りゅうせい)

 確か、そんな名前の奴だったと思う。
 同じクラスじゃないから良くは知らない。名前は格好いいけど、かなり地味な存在で、普通なら俺が彼の名前を知っているはずもなかった。じゃあ、何で知ってるかっていうと、かなり酷い苛めを同じクラスの連中にされている噂を聞いたからだった。クラス全員から除け者にされ、一部生徒からは暴行恐喝を受けているようだった。そのクラスの知ってる奴にちょっと聞いてみたら「気持ち悪いから」というよくわからない理由が原因らしい。運が悪いことに担任が事なかれ主義の典型的な奴でうすうすは知っているのに全く干渉しなかった。

 抱き合っている俺たちを見ると、如月はニヤーっと笑った。なんというか卑屈でもあり卑猥でもあり、それでいて見た者に激しい嫌悪感を抱かせる嫌な笑い、声のない笑いだった。
 驚いた寧々は、俺の陰に隠れるように離れた。

「あー、柊君と寧々ちゃんだ。こんなところでなにやってんの」
 妙になれなれしい口調だ。俺や日向と話なんてしたことないのに、なんだこれ。

「な、何もしてないわよ」
 邪魔をされて少し怒り気味の寧々が吐き捨てるように呟く。

「へへえ。僕見てたんだよぉ〜。夕方の第一校舎でチューチューしてたのに何もしてないっていうんだあ。舌までレロレロびちゃびちゃ入れっこしてたのにぃ。僕が入ってこなかったら神聖なる教室で一発やってたんじゃないのかな。ひゃっ、いやらしいね」

「何わけわかんないこと言ってんの。あんたには関係ないじゃない」

「僕知ってるんだよ。寧々ちゃんは同じクラスの漆多君と付き合ってるんだよね。なのに柊君とも平気でやっちゃうんだろ。すっごいスケベ。柊君だってその事知ってるくせに彼女とレロレロですか」
 あまりに嫌らしい口調で如月が話すもんだから彼女が切れかかっているのが俺にもわかった。

「おい、如月。そんなことお前には関係ないことだろ。すまないけどさっさと消えてくれないか」
 俺は邪魔に入った如月に少し
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