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インフィニット・ストラトス if 織斑一夏が女だったら
第九話《『私』と俺と私》
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生徒達から安堵の息が洩れる中、教師陣は難しい顔をしていた。

織斑一夏と、その同室していた二名が消息不明。ーー

内、織斑一夏以外の二名は、遺体として発見されたが、織斑一夏は未だ見つからず。

織斑千冬は、思い当たる節があった。

ーー四年前の、誘拐事件。

あの時も、一夏の周りにいた友人が遺体として発見されている。

千冬は手を強く握りしめた。

*

「と・・・ということは、ここは精神の世界であり、あなたは『私』の人格の一つ、そして、いまは、精神の壊れた私なるものが『私』を動かしている。というのですね!?」

「そうだ。お前も壊れた自分をみていただろ?あれは、相当ヤバイぞ。」

俺は『私』の記憶を既に見ることができた。だが『私』は、そういうわけではないらしい。俺が性格は男だと言ったら、「『私』の体に、ヘンなことしてませんよね!?」と、言われる始末だ。

大丈夫だ。俺は、性同一性障害として人格を得たからな。そして、変態である前に紳士なのだから。

変なことなんてしていない。たしか。

*

確かに、この人のおっしゃることに、嘘はなさそうなのです。

たとえ、この人が変態だったと前提しても、変態の前に紳士がつきそうな出で立ちをしていますから。さすが『私』の体です!

「・・・コホン。俺君のおっしゃる事はわかりました。ところで、『私』達はこれからどうすればいいのですか?」

沈黙が、白い空間を包んだ。

*

私は、スコールの隠れ家に連れていかれていた。

それは、白い外壁に黒い屋根をもつ二階建ての洋館であったが、森の中でも一際(ひときわ)大きい木が生えている一角の中に建てられているため、ずいぶんと近づかなければその姿を確認できない。

大理石で出来た浴室のなか、私は壁際のシャワーの前でスコールに体を洗われていた。

浴室には低学年用プールほどの大きさの浴槽があり、そこには絶えずお湯が流れている。

私に動く気配はない。まるで人形だった。

既に福音の血は乾ききり、私の全身に張り付いている。

スコールはそれらを優しく洗う。全身を、くまなく、愛でるように。

ーーあたたかい。

私は、たしかにあたたかい物を感じ、あたたかい物をさらに求めた。

確かに、そこには愛があった。それは、初めての成功個体へ向けての愛。無機質な愛。

私は無機質な愛だとは微塵も思わず、愛を求めた。織斑千冬からしかもらえなかった、あたたかい愛を。スコールからは得られるはずのない、家族としての、愛を。

スコールは私に深く、キスをした。

私は、スコールを求めた。あたたかいものが欲しくて。

でも、何をされても、私の心があたたかくなることはなかった。


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