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黒魔術師松本沙耶香 毒婦篇
7部分:第七章
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の緑波池という蓮の池のところであった。そこの池の中にある二階建ての東屋にいる。ここは丁度池の中央ににあることから湖心亭と呼ばれている。四〇〇年前に建てられたものであり清代の一七八四年に一度再建されている。中は喫茶店になっているが沙耶香はそこには入らす橋に向かった。ここはここと湖心亭を結びギザギザにかかっている。この橋の名を九曲橋という。沙耶香はこの九曲橋の上を進んだ。その下にはやはり目が眩むばかりの鮮やかな緑の池が広がっている。
 この橋は以前は石造りであったが一九三二年に鉄筋コンクリート製に再建された。この橋がギザギザになっている理由はであるが人間はジグザグに歩けるが悪霊は真っ直ぐ進むのでこれを池に落としてしまう為とも湖岸から見たデザインがいいとも橋をジグザグに歩けば景色がいろいろに変わるからだとも言われている。また曲がる回数が九回であるのは、九は一桁の数の中で一番大きいので規模が大きいことを象徴するということらしい。中々色々と話がある橋である。
 その橋の上を歩いていると。前から誰かがやって来た。それは黒い服に目を包み丸く黒いサングラスをかけた小男であった。手には杖を持っている。
「おかしなことね」
 沙耶香は前から来るその男を見て呟いた。何時の間にか周りには誰もいなくなりこの広い場に二人だけとなっていた。面妖なことにだ。
「この橋は悪霊は歩けない筈だけれど」
「ほほほ、左様ですか」
 男は沙耶香のその言葉に笑う。笑いながらもその足を止めない。杖を頼りに前に進んでいるがその動きはやけに速いものであった。
「では私はそういった類ではないのですな」
「さて、それはどうかしら」
 沙耶香はその男に対して述べた。
「とてもそうは思えないものがあるけれど」
「それはまたどうして」
「気配よ」
 沙耶香は男を見据えながら言う。
「その気配はとても普通の人間のものではないわ。そう、まるで」
「まるで?」
「人ではないもの。異形の者の気配ね」
「おやおや、初対面の者を捕まえて」
 男は沙耶香のその言葉におかしそうに笑ってみせてきた。
「随分と失礼な方です」
「生憎と礼儀作法には相手を選ぶのよ」
 沙耶香は男を見据えたまま言う。言いながら足の動きを止めていた。
「悪いけれどね」
「左様ですか。ですが私は違いますぞ」
 男は確かに礼儀正しい。しかしそれは普通の礼儀正しさではなかった。何か得体の知れない不気味さと剣呑さを含ませたものであった。それを身に纏わせたまま沙耶香の方に歩いて来るのであった。

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