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黒魔術師松本沙耶香 毒婦篇
6部分:第六章
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義なのよ」
 笑いを言葉に含ませて老婆に言葉を返す。そのうえでまた付け加える。
「けれど楽しみは」
「時間をかけてじゃな」
「そういうことよ。わかってくれているのね」
「日本人らしくないのう」
 そう沙耶香を評するのであった。
「どうにもこうにも」
「あら、日本人はそう簡単には定義できないわよ」
 そもそも沙耶香は普通にいるような人間ではない。それを考えればこの言葉は当然であった。
「違うかしら」
「まあそうじゃが。それにしても主はな」
「話はいいわ。それじゃあね」
「行くのじゃな」
「また来るわ」
 最後に老婆に告げた。
「その時には」
「仕事が終わっている時じゃな」
「早いうちに終わるわ」
 この言葉には絶対の自信があった。沙耶香の自信であった。
「それを待っていて」
「ふむ。ではその時にはじゃ」
「桂花陳酒がいいわね」
 沙耶香は老婆に後ろを向けて歩きながらこう告げた。
「折角の中国だから」
「中国では中国の酒か」
「ええ。もっともこれからも飲むつもりだけれど」
 酒を愛する沙耶香らしい言葉であった。一つには捉われないというところも。
「それがいいわ」
「やれやれ、それだけで済むとは思えんがのう」
「私は欲は深くない方よ」
 少なくとも金やそういったものに関しては。そうした意味では欲深くはないのが沙耶香である。
「それで充分よ」
「女子は言わぬのじゃな」
「それは途中で見つけられるわ」
 楽しげに述べる。

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