居場所は変わりなく
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を忘れるな?」
「重ねて失礼致しました。孫権様の気質が余りに我が主や白蓮さんと似てらっしゃったので……孫策様がご隠居したいと耳にも挟んでいたモノでして、早合点してしまいました。申し訳ありません」
何処からそんな情報を、とはこの場で言うべきではない。
互いの軍に草など居て当たり前。如何な孫呉といえど完全に情報断絶などは出来ない。
蓮華が気になったのは、一つ。
――諸葛亮は姉さまを見ていない。何か理由があるはずだ。盟を結ぶのが姉さまだと……劉備に都合が悪いのか、それともこいつが信用していないだけか。
駆け引きの言葉に蓮華の空気が変わる。しかし、やはり止めたのは白蓮だった。
「朱里、ご苦労様。続けてで悪いが軍の予定を話してくれ。まずはこの戦を終わらせるのが先決だろ?」
二人が口を開く前に割って入って、彼女は呆れたようにため息を一つ。
さも当然のようにこの戦の手伝いをすると言い切って、同盟の話はまだ宙に浮かせたまま。今はまだそれでいいと、白蓮は互いの国に線引きを引いた。
「はい。では今後の予定と予想をお話いたします。小規模の軍議で構いませんので、主要人物を集めてその時に話しましょう」
そんな白蓮の対応に内心で舌を巻きつつ、朱里は軍議の主導権をもぎ取りにいった。
自分が知っている情報があるから、孫呉が行うはずの戦に自分達の介入をやりやすくしていく。
白蓮と先に邂逅させたのは正解だったと、朱里は微笑んだ。
「分かった。部下を集めよう。中心に幕を張らせるから少し待っててくれ」
「ありがとうございます」
短い返答の後に、朱里は去って行く蓮華の背をじっと見つめた。
大きく見えるその背中に、彼女の王才を見て取る。ただ……心の内で呟いた。
――白蓮さんや桃香様に似てる。でも、“あの人”なら……此処で緩く笑って楔を打ちに来る。
様々な王を見てきた彼女は思う。特に、自分が一番恐れ、そして愛する男の背にはまだ届かないと。
飢えていた。自分の全てを使っても足りない存在に。敗北させられたのは覇王と黒麒麟の二人にだけ。
自惚れることなく、彼女は冷静に人を見極めていく。
“足りない所を補わないと。その為には孫策さんが……邪魔だ。”
心の声を振り切って、彼女は頭を小さく振った。
上手く行く策は多々ある。これからの為に遠大な戦略思考で組み立てられる手はいくつかある……が、朱里はそれをしない。
あくまで桃香の為に。桃香の望むやり方をしなければ意味が無い。
――“偶然喰らえる”のなら……問題は無い。私だけが黙っていればいいんだ。こんな筋書。
幾重にも渡る計算の元、彼女が出した答えは二つ。
この戦で手に入れられるモノを考えた上で、欲しいものはたった一つ
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