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乱世の確率事象改変
居場所は変わりなく
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権殿、それでも“落とし前”は必要だよ。調子に乗り腐った連中がいけしゃあしゃあと……なんて民に思わせちゃならない。私達の一番大きな仕事はそれを無くしていくことだ。諦観させずに納得させ、隷属させずに手を繋がせるってすっごく難しいけど、それでも目指さないと始まらない。
 孫権殿が悩んでた時間は無駄じゃない。悩めるってことはそれだけ相手を想ってるってことなんだよ」

 ニッと笑った顔に引き付けられた。何処までも信じているような透き通った声、瞳。彼女は……光だ。

――これが白馬の王。信と義と仁を貫く北方の英雄。今出会えて良かった。

 ぐ、と腹に力を入れた。直ぐにほうと息を吐いて全身からは力を抜く。
 学ぼう。一歩一歩進んで行こう。私は恵まれている。まだまだいける。
 後に、すっと手を差し出した。一寸驚いた公孫賛が、はにかんでから手を差し出してくれた。

「私は孫権、真名は蓮華。あなたと出会えたこと、嬉しく思います」
「……公孫伯珪、真名は白蓮だ。それと敬語はやめてくれ。私の中で友に優劣は無い。蓮華も今から私の友達なんだから」

 優しくて暖かい手の温もりが、きっとこれから強い絆が育まれる事を約束しているようで嬉しかった。
 いい出会いだ。きっとこの窮地も乗り越えて、乱世を終わらせて……私や皆の望む平穏な世界を手に入れてみせよう。




 †





 軍としてのまとまりを持った集団に百数人の兵士達が合流した。
 進軍を停止して確認した蓮華達の前に立ったのは、小さな金髪の少女だった。
 白馬を進めてその少女の前に出た白蓮は、少しだけ心配を向けながら声を掛けた。

「用事は終わったか、朱里?」
「はい。万事問題有りません。この戦の終端はもうすぐそこに」

 こんな幼子が……とは蓮華も言わない。小蓮でさえまだ年端もいかないのだ。それ以上に幼い見た目だとしても、袁術を思い出せばなるほどと納得も出来よう。
 じっと見つめる蓮華を見上げて、朱里はふっと微笑み声を上げた。

「初めまして孫権様。私は劉備軍が軍師、諸葛孔明と申します。此度の盟を受けていただき、真にありがとうございます」
「まだ受けたわけじゃない。白蓮のことは信じられるけど劉備との盟はまだ保留させて貰う」
「……それは失礼いたしました。では後日、会談の場を設けさせてください。この戦を早急に終わらせてから」

 灼眼が燃えていた。その昏さを見て取って、蓮華の背筋に悪寒が走った。

――なんだ……? これが少女の纏うモノか?

 他愛ない話であるはずなのに、全てを高みから見下ろされているような感覚。
 自分が知っているどの軍師とも違うその少女の気に蓮華は……圧されず。

「分かった。だが姉さまと、だ。この国の主は孫策、それ
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