居場所は変わりなく
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血と臓物が大地を彩る。本当は兵だったはずのモノ達の死臭で埋め尽くされ、慈悲など欠片も無かった。
肩で息をする戦姫が、一人。返り血を盛大に浴びて大地に剣を突き刺して立っていた。
「……ふふ……いいわね。久しぶりじゃない、この感じ」
ペロリと下で頬に付いた血を舐めとった。
すっかり忘れていた。自分が生きてきた場所を。自分が生きてきた意味を。
母に連れられて戦場から戦場を渡り歩き、命の極限と感情の津波を感じる場所を生き抜いてきた。
何の為、どんなモノの為、誰が為、誰が大切の為に。
南海覇王と呼ばれる剣を振るって十数年。いつも心にあったのは愛しい愛しい大地への想い。
茶番を敷くようなクズに奪われたこの大地。
自分の幸福の為に他者の平穏を喰らう肥えた為政者達。
お綺麗な言葉を並べようと、その腐った心の匂いは間違わなかった。
友好関係など築くことは出来ない。従うなど反吐が出る。そんな下らないモノ達に屈し、心折れて同調などしてしまったら、虎は虎では無くなってしまう。
自分達が戦った意味は、自分達が勝ち取った平穏は……そんな輩を駆逐したかったのだから。その為の足がかりが、もうずいぶんと昔に奪われた。
有象無象、悪鬼羅刹、魑魅魍魎が跋扈していた揚州の地を、虎は平らげたはずだったのだ。なのに奪われて、やっとこの間に奪い返した。
だというのに……また奪われようとしている。
――こんな世界を変えたいと、どれだけ剣を振るってきたことか。
いつでも繰り返しだ。
歴史を見ても、何であっても、この世界は悪い部分が繰り返してばかり。
求められる声だけじゃなかった。自分がそう願ってこの世界を変えたかった。
誰も彼女には近づかなかった。味方の兵士達でさえ恐れ慄き、あまりの苛烈さに近付くことすら儘ならなかった。戦いが終わったこの時でも変わらず。
焼け果てた村の一端で、彼女はふと、一つの小さな靴を見つけた。可愛らしい子供の靴。少女のモノであろうか、きっと未来に希望溢れるモノだったに違いない。
憂いた瞳で靴を手に取る。この小さな足は、どんな道を歩こうとして、どんな道を歩けたのかを想うと心が締め付けられる。
カタ……と小さな音が鳴った。横に目を向けると、其処には大きな瓶が蓋をされていた。
不思議に思った。ネズミでも居たのか、と。でも何かが違う。気配がある。怯えが、あった。
一歩、二歩で雪蓮は瓶の蓋を開けてみた。
「ひっ……」
其処には、絶望の闇色に瞳を落ち込ませた少女が、一人。
「や、やら……おかーさんっ……たすけてっ、おかーさんっ」
ぎゅうと身を縮こませた少女は、瓶の底で蹲る。何度も何度も、母を呼びながら。
誰だろう。誰かに見える。誰かに被っ
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