責任を放棄した男
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《いわ》く。
彼に喰われかけたことで自分の魂と彼の精神体が繋がった状態となり、彼の意識から情報と実感を得ていたのではないか、らしい。
だからこそ、彼にも自分の感情が声として聴こえていたのだろうと。
礼拝堂で自分と話すベゼドラは、物凄く迷惑そうな渋面になっていた。
自覚は無いが、体を乗っ取られている間、自分は相当騒いでいたようだ。
当然だ。
自覚があっても、自分は全力で大騒ぎしていただろう。
目覚めた時、自分の体の隅々に残っていた、ロザリアの熱や感触。
それを心地好いものとして受け入れた自分に、一瞬猛烈な吐き気がした。
仕えるべき彼女を欲望のままに閉じ込め、汚し、愉悦に浸るなど。
そんな状況を、神父である自分が黙って見過ごせる筈がない。
確かに、ロザリアに触れたい、抱きしめたい気持ちはあったけれど。
あんなにも酷い淫行など、自分は望んでなかった。
しかし。
ベゼドラが暴虐の限りを尽くしてくれたおかげで、自分は冷静になれた。
自分の正直な気持ちを、素直に認めることができた。
彼女を愛している、と。
彼女の心や尊厳を踏みにじるベゼドラのやり方とは違う。
彼女には、彼女のままで幸福をあげたい。
彼女が心から笑っていられる時間を、傍で見守りたい。分かち合いたい。
逃げるべきではなかった。
この気持ちは、この想いは。
ロザリアと、そして自分自身と向かい合って、受け入れて。
自分の口から、彼女に直接告げるべきだったのだ。
どの道、女神アリアに背く結果になるのなら。
今も耳奥で鮮明に響いている、怒りが籠ったロザリアの声。
『一言の弁明もなく楽になれると思うなよ!!』
その通りだ。
自分は、彼女に何も告げていない。
言い訳も謝罪も好意も、愛情も。
あれだけのことをしておいて、何も言わないまま死に行くのは卑怯だ。
ロザリアを導くと約束した。
決して、反古にはしない。してはいけない。
もう一度、彼女に会う。
アリアへと戻ってしまった彼女に届くかどうかは判らない。
それでも、もう一度彼女に会う為なら。
この気持ちを彼女に伝える為なら。
これまで与えられてきたすべてを投げ棄てたって、全然構わなかった。
今までとずいぶん変わった自分に、うっすら笑えてくるが。
一旦ベゼドラに吸収されかけたおかげで、彼の性格から影響を受けた……
とでも、思っておこう。
ざわめきの中へ戻れば、教会を出てから今日になるまで辿ってきた道中と同じような、関心と無関心が入り交じる視線の渦に巻き込まれた。
渦の中心に居るのは、ベゼドラだ。
彼は容姿が少々特殊
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