責任を放棄した男
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ンとした硬い黒髪に紅い虹彩。スラッと均整が取れた体の線。褐色の肌に詰襟で前面が開いたロングコートを羽織り、ベルトが飾りになっているズボンとロングブーツを履いている。総て黒革製。上半身はコート以外何も着ていないが、不思議と厭らしさは感じない。首に掛けた味気無い銀色のチョーカーが、彼の男らしい魅力を引き立てている。
対して自分は、至って普通の白いシャツに、固めながら皺が付きにくい布地の白いズボンと白革製のブーツを履き、襟を寝かせたロングコートで全身を覆っている。
……コートの形が違うし、白黒でお揃いにしたつもりは無いが、端からはそう見えるかも知れない。
同じ店で購入しなければ良かったか。
好奇心や嫌悪感や恐怖心が溢れる数多の視線を潜り、街中を歩き回る。
この街の建物は、どれも白い石を組んでから平らに削った壁で造られているらしい。
基礎となっているのは木材のようだが、防虫加工を施された上に白い特殊な塗料で染められているので、パッと見の外観では何処に木材があるのか判別がつかない。匠の技だ。
壁が白一色だからか、屋根に使用されている瓦は赤だったり青だったりと実に多種多様。家主の意向に添って決めているのだろうか。稀に紫色や桃色の瓦まであって、街全体としての統一感はあまり無い気がする。
上下水道は民家にも完備され、人が集まる場所には廃棄箱が設置され、清潔感は申し分無い。
広場には噴水まであり、水に困らない裕福な生活振りが窺える。
それでも、一歩細道に入れば先程の悪行が見過ごされる影を見付けてしまうのだから、不思議なものだ。
テントを張った屋台がずらりと並ぶ大通りでは、大声で客を引く店主や、笑いながら駆け回る子供、商品を値切る婦人が活気溢れる日常を演出している。
微笑ましいと思う反面、これだけの人間が揃っていても、喰い物にされる女の子一人助けられない社会なんだな……と、物悲しい気持ちになった。
女の子一人を喰い物にした自分が言う事ではないが、これがアリアの願っていた世界なのだろうか?
遥か昔、救いを求める者に癒しの力で応えたという救世の女神アリア。
人間のみならず、動物も植物も愛して護った彼女は、この現状を見て何を思うのか。
「おいこら、クロスツェル。考え事に没頭するのは構わないが、ちゃんと聞き耳は立てろよ。何の為にこの俺が人間に混じってると思ってんだ」
雑踏を先行くベゼドラが自分に振り返って、不機嫌に睨んだ。
「……すみません。お手数を掛けます」
「ふん。アリアを見付けるまでの間だけだ」
背を向ける彼に苦笑する。
契約者として自分を喰おうとした彼も、現在ではロザリアを捜す協力者だ。
アリアを殺す為だと言ってはいるが、ロザリアを想って捜しているのは隠しようがない。半ば強引に付いて来たのは
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