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逆さの砂時計
責任を放棄した男
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くベゼドラは、壊れた木箱と割れたガラス瓶のベッドでぐったりと気を失っている男の首に牙を立てる。
 数秒後、彼は灰になって液体と混ざり、泥と化した。
 「うげぇー……不味ぃ……。炎天下に一ヶ月放置した牛の乳の味がする」
 「飲んだ事があるのですか?」
 「あるわけ無ぇだろ。例えだ例え。比喩も知らんのか」
 「比喩とは類似した異なる物事を代理表現する物で、つまりこの場合は知っていなければ例えようがないと思……」
 「お前、マジウザイ」
 「あ」
 苦虫を噛み潰したような顔で、ベゼドラはさっさと表通りに足を運んだ。
 私も、泥になった男に一礼してから、スタスタと歩くベゼドラを追い掛ける。


 ロザリアが姿を消した。
 礼拝堂で目を覚ました自分は、隣で眠る黒髪褐色肌の男をベゼドラだと理解していた。全ての詳細を覚えている訳ではないが、ロザリアにした事やベゼドラと契約した事、ロザリアがアリアだった事は記憶に残っていた。ベゼドラ曰く、彼の意識を通して実感していたのではないか……らしい。
 体の隅々に残るロザリアの感触と、それを心地好いものとして受け入れた自分に一瞬、猛烈な吐き気がした。
 仕えるべき彼女を欲望のままに汚し、閉じ込め、愉悦に浸っていた。
 実際にはベゼドラの行いだが、体は自分の物だし、望んだのは自分も同じだ。
 ずっとロザリアに触れたかった。抱き締めたかった。
 さすがにあそこまでの暴力的淫行は望んでいなかったが。
 しかし、ベゼドラが暴走の限りを尽くしてくれたおかげで、目を覚ました自分は冷静な自覚が持てた。
 ロザリアを愛している、と。
 彼女を踏み躙るベゼドラの遣り方とは違う。彼女には彼女のままで幸福をあげたい。
 逃げるべきではなかった。
 この気持ちは、向かい合って、受け入れて、彼女に告げるべきだったのだ。
 どの道、女神アリアに背く結果になるのなら。
 『一言の弁明も無しに楽になれると思うなよ!』
 脳裏に浮かぶ彼女の怒り。
 その通りだ。自分は彼女に何も告げていない。言い訳も謝罪も好意も……愛情も。
 何も言わないまま死に行くのは卑怯だ。
 彼女を導くと約束した。反古にはしない。
 してはいけない。
 ロザリアにもう一度会う。アリアに戻ってしまった彼女に届くかどうかは分からない。
 それでも、ロザリアに会う為なら……この気持ちを伝える為なら、与えられた総てを投げ棄てたって構わなかった。
 今までと随分変わった自分に薄っすら笑えてくるが、ベゼドラに吸収されかけたおかげで彼の影響を受けた……とでも、思っておこう。


 ざわめきの中に戻れば、これまで辿った道中と同じような、関心と無関心の視線に巻き込まれた。
 ベゼドラは容姿が特殊で背も高く、目立つから仕方がない。
 短くツ
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