無垢の時代
廃墟を彷徨うワガママ娘
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いが、それを話す事で今より快適になるとは思えない。
「それで、結局何を企んでいるの?」
「ん? 別に俺は何も企んじゃいないよ。単純に一緒に帰らないか誘っただけだ」
「女の子を誘っておいてそれ?」
「何だ。デートの誘いだとでも思っていたのか? それは気が利かなかったな」
次は何か考えておこう――クククッと喉を鳴らしながらその少年は言った。
「次が欲しければ、もう少し楽しませなさいよ」
「これは手厳しいな。それとも、お喋りな男が好きなのかな?」
「そうね。陰気な男よりはマシじゃない?」
「良い男ってのは多くを語らないものさ」
「じゃあ、口が減らないアンタは良い男じゃなさそうね」
「さて。だが、陰気な男でもないつもりだよ」
それはそうかもしれない。小気味よく続く会話はそれなりに快適だった。次があってもいい――そう思う程度には。
「―――」
さらに会話を続けようとして、ふと隣の少年が足を止めた。それだけではなく、片手で軽くアタシの事も制止している。その視線は妙に鋭い。一体何だろうか。不安と疑問の中間くらいの気分で問いかけようとして――
「まさか二日連続でお前達と出くわすとは思わなかったな」
視線の鋭さに負けないくらい鋭い声で、彼は言った。その言葉を理解できなかったアタシを他所に、応じる声があった。
「そりゃこっちの台詞だ。テメーどういうつもりだ?」
近くの路地からゾロゾロと現れたのは、髪を脱色し、耳にはいくつもピアスをつけた数人の男――見た目で人を判断するなとはいえ、ステレオタイプの分かりやすい不良集団だった。思わず少年の陰に隠れていた。アタシも女の子だ。一人二人ならともかく、そんな集団を怖いと感じる当たり前の感性くらいある。
「何、柄の悪い連中が周囲をうろついてるらしいからな。念のため家までエスコートしてるだけだよ」
「テメーだってそのガキ怨んでるんじゃねえのか? ああ?!」
激昂する男達に思わずひるんだのはアタシだけだった。
「馬鹿かお前達。ああ、馬鹿か」
一人で納得してから、その少年は余裕たっぷりに肩をすくめた。
「妹が喧嘩したくらいで大騒ぎするか。常識を知れ、常識を」
「ンだとコラ! シメるぞこのクソガキが!」
「出来るのか? 小便漏らして腰抜かした連中が」
どうやらあの噂は本当らしい。恐怖に麻痺しかけていた思考で、ぼんやりとそんな事を思う頃には、男達は拳を振り上げて襲いかかってくる――が、それより早く、
「やれやれ……」
ゴンッ!――と鈍い音と共に、リーダー格の男の鼻づらに少年の拳がめり込んでいた。その勢いに負けて、その男は鼻血を吹き出しながら後ろにのけぞり倒れる。
「誰に対してはしゃいでいる? 身の程を知れ。クソガキども」
それはまるで魔法のような光景だった。いくら年上とは
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