暁 〜小説投稿サイト〜
その魂に祝福を
無垢の時代
廃墟を彷徨うワガママ娘
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る。
「それがよく分からないッス。でもみっちゃんを探してたみたいッスよ?」
 大層な悪戯坊主でもあるが、それ以上に人懐っこく編入当初から俺に全く物怖じせずに接してきた。また、面白いもの全般に好きという面でも価値観が共有できた。そのため、今に至るまで特に友好な関係が続いている。まぁ、簡単に言えば年の離れた友人だと言っていいだろう。多少ならず不機嫌になったのはそんな理由もあった。
(なのはに続いてコイツにまで絡むなよな)
 もっとも、なのはに関しては未遂だが。改めて連中が消えていった路地を見やり声にせず毒づく。まったく、迷惑な連中だ。
(しかし、俺を探していただと?)
 意趣返しという雰囲気でもなさそうだったが。
「アリサちゃんがどうのこうのって言ってたッスよ」
 他に何か言っていなかったか?――問いかけると、圭一はそう答えた。とはいえ、別に情報が増えた訳ではない。接点のない少女が一体何だと言うのか。
「アリサちゃんって確かなのはちゃんと喧嘩した子ッスね?」
「良く知ってるな」
 驚くほどでもないかもしれない。何せ休み時間ごとに面白い事を探して学校を徘徊しているような奴だ。必然、学校内の出来事には詳しい。
「そりゃみっちゃんの妹さんに手を出したとあっちゃ噂にもなるッスよ」
 そんな大げさな。別に取って喰ったりはしないのだが。しかし……どんな噂だか知らないが、何となく事情が見えてきたように思う。
(つまりあの連中は俺がその娘に意趣返しでもすると思ってるのか?)
 仮にそうだとして、あの連中が介入してくる理由が分からない。分からないが、分からないなりにやるべき事は決まったように思う。
(あの連中に目をつけられてるとなると、な……)
 放っておいていいものではない。杞憂で終わればいいが……そうでなかった場合はどうにも寝覚めが悪すぎる。
「みっちゃん、女の子には優しくしないとダメッスよ?」
「分かってるよ」
 やれやれ。また面倒な事にならなければいいが――漠然と夕暮れの空を見上げ、思わずため息をついていた。




「今日、一緒に帰らないか?」
 そんな風に誰かに誘われたのはこれが初めてだった。別にそれで何か不自由をしていた訳ではない。普段であれば専属の運転手が校門前まで迎えに来てくれる。エアコンの効いた車は快適だ。そのまま習い事にも送ってもらえる。何一つ不自由な事はない。
 ただ――それでも、ノコノコとこの男と一緒に歩いている理由を挙げろと言われれば、結局のところただそれだけの事でしかなかった。
(でもまぁ、こんなもんよね)
 初めて歩いて帰る帰り途は、それでも劇的な何かがある訳ではない。傍らの少年は決して無口な性格ではないだろうが、生憎とお互いに共通する話題もない。彼の妹についてなら共通の話題と言えなくはな
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