無垢の時代
廃墟を彷徨うワガママ娘
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いくら本能を鈍らせた人間とは言えその差は把握していると思ったが。
「ウチの学校の生徒に何の用だ?」
「アアッ?! って、テメェは……ッ!」
そっと近づき声をかけると、連中は声を荒げて振り向き――こちらを見て表情を凍りつかせた。どうやら全く忘れ去っている訳でもなさそうだった。
「小便漏らしてひっくり返るだけじゃあ満足できなかったか?」
「テメェ! バカにしてンのか?!」
怒りか羞恥か知らないが耳まで真っ赤にして連中は拳を握る。一応迎撃の体勢を整えていると、リーダー格の男が言った。
「それはいい。今日の要件は別だ」
「へぇ……。それで、何の用だ?」
別に興味もなかったが、取りあえず促す事にした。
「儲け話だよ。オメーも気にいると思うぜ?」
「興味ないな」
どこを根本的な問題とするかは悩ましいが……いずれにしても馬鹿馬鹿しい話なのは疑いない。小学生相手にカツアゲする様な連中の持ってくる儲け話が上手くいく訳がないのだから。
「アリサ・バニングスが相手でもか?」
「……?」
言われて。束の間考え込んでいた。そんな名前の同級生がいたかどうかをまず考え、次に翠屋の常連客の中にいたかを思い返し……そう言えば、なのはと喧嘩した少女の名前だったと思い出した。
「言っただろう? 興味がない」
思い出したからと言って、だからどうしたという事もない。その少女とは面識がないし、仮にあったとしてもこの連中が持ってくるような胡散臭い儲け話なんぞに乗るような破滅願望はない。
「それに今はいくらか機嫌が悪い。……お互いここらで別れておいた方がいいんじゃないか?」
「チッ、そーかよ。じゃあ、精々後で後悔しろクソガキ」
視線を鋭くすると、安っぽい捨て台詞を残して連中はぞろぞろと路地の奥の方に消えていく。
「みっちゃん、だすかったッス〜〜〜!」
その背中を見送る暇もあればこそ――いや、暇があってもしないが――絡まれていた同級生が抱きついてくる。
「ああ、分かったから抱きつくな鬱陶しい」
「ごわがったッスよ〜〜〜〜」
「分かったから鼻水をつけるな!」
取りあえずその同級生を引き剥がす事にした。それで何だってあんな連中に絡まれたんだ?――と問いかけようとして、ふと思いなおす。
「別にお前の友好関係にケチをつける気はないが、ああいう連中と関わるのは心配だな」
あの様子からすれば彼から接触を取ったとも思えないが、念のため言っておく。
「分かってるッスよ。向こうが急に絡んできたんス」
「そうか。それなら一安心だな」
それは別に社交辞令ではない。本当にそう思っている。
「それで圭一。結局あの連中は何がしたかったんだ?」
鈴木圭一。それがその同級生の名前だった。くっきりした顔立ちと笑う口元に覗く八重歯が特徴のやんちゃ坊主であ
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