無垢の時代
廃墟を彷徨うワガママ娘
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に帰らなければならないのだから。
『ま、この一家の娘だってことだな』
その笑えない冗句を告げた日の夜。リブロムはそう言って笑った。なのはから聞き出した話からすれば、髪飾りを取られた別の少女を庇っての事らしい。まぁ、要するに度の過ぎたからかいに首を突っ込んだ訳だ。
「そうだな」
思い込んだら一直線。例え相手が殺しにも手慣れた不死の怪物だとしても、家族として迎え入れるあの夫婦の娘だということだ。それは美点にも欠点にもなる。今回はどうなのだろうか。喧嘩両成敗という理屈に従えば欠点として機能したと言うよりない。ただ、庇われたその娘にとってすればあるいは美点として映ったかもしれない。結局のところ長所にならない短所はなく、短所にならない長所はないというだけの話だ。
(それが致命的な欠点にならなければいいが……)
ありきたりな結論と一抹の不安を残し、顔も知らない後輩を巡る一件は幕を閉じた。少なくとも、この時はそう考えていた。そして、それがどうやら思い違いだったらしいと考え直すまで大よそ一週間ほどの時間が必要となる。
3
「アリサ・バニングスはいるか?」
廊下から男の声が聞こえた時、身体が強張らなかったと言えば嘘になる。その言葉を聞いた時点で、誰が訪ねてきたかを半ば確信していたのだから。グッと奥歯を噛み締め、声の聞こえた方へと向き直る。傍に立つクラスメイトより頭一つ分は背丈が高いその少年はまず間違いなく先輩だろう。そして、先輩が訪ねてくる理由にも心当たりがあった。
高町光と言う名前の先輩がいる事をアタシが知ったのは、ソイツが編入して来てからしばらくしてからの事だった。具体的にいつ知ったのかは覚えていない。ただ、いつの間にかその名前を知っていた。理由は簡単で、ソイツは私と同類だったからだ。端的に言えば、学業優秀な問題児と言う意味で。アタシが扱い辛い我儘なお嬢様なら、ソイツはロクに学校に来ないサボり魔だ。だと言うのに、テストでは常にトップ。加えてスポーツ万能。良くも悪くも目立つ存在なのは言うまでもない。そんな編入生に対するやっかみがなかった訳もなく……しかし、その天才はそれを黙らせるだけの力を持っていた。絡んできた数人の六年生を片手間にねじ伏せたという噂が実しやかに囁かれている。文字通り文武両道に秀でた天才だ。そんな事もあって、前時代的な言い回しをすれば聖祥大学付属小学校の番長といった立ち位置にいる。つまり、恐れられながらも敬われている。あるいは逆かもしれない。生徒のみならず、先生達も同様だった。けれど……実を言えば、その先輩が暴力をふるったという噂はほとんど皆無だった。僅かに語られる噂も、信憑性で言えば怪しいものだ。……ただ一つの例外を除いて。
そう。その先輩には弱点があった。いや、むしろ逆鱗というべきか。やっかみを晴らすためにそ
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