暁 〜小説投稿サイト〜
その魂に祝福を
無垢の時代
廃墟を彷徨うワガママ娘
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なければおかしい。
(仕掛けてきた、か……?)
 いや、気まぐれを起こして寄り道しているだけかも知れない。帰ったはいいが、拗ねて顔をあわせていないだけかも知れない。可能性の上なら他にもありえる。
 そう。例えば帰り道に誘拐されたといったような。
「士郎。少し出てくる」
 告げて、店を飛び出す。今必要なのは可能性などではない。単純な事実と、それを導くための情報だ。
「隼よ」
 囁くように練り上げた魔力を開放する。魔力による超加速を活かし、屋根から屋根へと飛び移りながら思考を巡らせる。そう難しいことではない。奴らが根城にしている場所は街に何ヶ所かあるが……アリサ・バニングスという少女は控えめに見ても人目を惹く容姿をしている。ならば、その中で最も人気がない――加えて、あえて人が近づかない場所。そこから潰していくのが一番の近道だろう。
(それにしても、あの連中ついに頭の螺子を飛ばしやがったか?)
 さもありなん。元々緩んでいた連中だ。だが――
「暴発にしては手が込んでいるな」
 もっとも。それはあの娘を見つけた後で考えればいいことだろう。




「そうね。考えておくわ」
 ああ、今日も一緒に帰れば良かった。一緒に帰って愚痴の一つも……泣き事の一つも聞いてもらえば良かった――気持ちの悪いまどろみの中で、ぼんやりとそんな事を考えていた。何でかは分からない。何も分からない。頭がぼんやりとして、何も考えられない。
「じゃ、さっそく■■■まおうぜ」
「オイオイ乗り気だな。まだガキだぜ?」
「良いんだよ。その方が■■■が良いだろ」
「■■■■かよ、オメー」
 言葉は理解できない。けれど、何か怖い話をしていることだけが伝わってくる。助けを求めようにも声は出ないし、逃げ出そうにも身体は動かなかった。極彩色の不気味な影法師がげらげらと音を立てながら迫ってくる。怖い。怖い。怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!
「少し眠っていろ」
 甘い匂いと共に囁かれた言葉。それは魔法の言葉だった。溶けた鉛のような意識がフッと軽くなる。暖かな何かが額に触れて――
「起きたか?」
 パチッと。そんな音がしたような気がした。視界に広がる少年の顔を見て何度か瞬きをした。過去と今が繋がってこない。何でコイツがいる? アタシは一体どうなった?
「おっと。大声を出すのは無しだ。魔法が解ける」
 それは冗談だったのだろうか。鼻先に人差し指を立てながら、その少年は片目を瞑って見せた。まだ頭が働かない。そのせいもあって、ひとまず黙って身体を起こした。
「ここ、どこなの?」
 まだぼんやりとした視界でも分かるほ
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