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黒魔術師松本沙耶香 毒婦篇
26部分:第二十六章
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でそれを頂いたのだけれど」
「まあ姉妹じゃからな」
 老婆も目を細めさせてそれに応えるのだった。
「贈り物が似るのも当然じゃろうな」
「考えてみればそうね。それじゃあ」
「貰ってくれるかのう」
「くれるものは貰っておくのが私の信条よ」
 そう述べて手を伸ばす。そうしてその紹興酒を手に取ったのであった。
「では頂くわね」
「紹興酒の中でも絶品じゃぞ」
 老婆はそれを強く保障した。
「楽しんで飲んでくれれば何よりじゃ」
「そうね。お酒は楽しむ為のもの」
 既にそれを手の中に収めている。そうしたうえでの言葉であった。
「是非そうさせてもらうわ」
「そうしてもらうと何よりじゃ。それにしても」
「何かしら」
 ここでまた老婆の言葉に顔を向けるのであった。紹興酒から一旦顔を離している。
「よく生きておったな」
「彼女を抱き締めたことかしら」
「それもあるがあの女の術でじゃ」
 老婆はそこも言うのであった。それこそが彼女にとっては最大の謎であったのだ。
「丹薬を飲んでいたとはいえな」
「かなりの量を飲んだわ」
 沙耶香は自分でそれを告げた。
「そのせいよ。元々かなりの効果がある丹薬だったけれどね」
「質と量か」
「ええ。かなりのものを支払ったけれどその価値はあったわ」
 道士にかなりの寄付をしたことも言う。だがそれは沙耶香にとっては決して高いものではなかったのだ。それだけの価値があるものだったからだ。
「おかげでこうして仕事を果たせて」
「最後に抱き締めることができたからかい」
「美女の最期を看取るのは最高の幸せよ」
 そう述べてまた目を細めさせた。
「違うかしら」
「そうじゃのう。少なくとも絵になるな」
「それができたからいいのよ。それでね」
「左様か」
「少なくとも悔いのない仕事だったわ」
 それはかなり満足していた。
「おかげでね」
「ならよいことじゃ。そして」
「そして。何かしら」
「これからすぐに東京に帰るのじゃな」
「飛行機のチケットはもう用意してあるわ」
 そう老婆に対して答えた。
「暫くしたらね。この店を出たらすぐに空港に向かうわ」
「ではまた今度じゃな」
「そうね。気が向いたらここに立ち寄ることもあるでしょうけれど」
「どうせ女を楽しむついでじゃろう」
 沙耶香の言葉に笑って言葉を返した。
「違うかのう?主のいつもを考えると」
「そうかも知れないわね」
 そして沙耶香もそれを否定しないのであった。
「それかお酒か」
「どちらにしろ。主の好きなものばかりじゃな」
「美女と美酒は人生の悦びよ」
 妖美な笑みを浮かべての言葉であった。
「その二つがあるのなら何処にでも行くわ」
「わかった。じゃあその二つに巡り合えればまたな」
「ええ。それじゃあ
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