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黒魔術師松本沙耶香 毒婦篇
25部分:第二十五章
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るけれど」
「それでも一本全ていったのよ」
 沙耶香はこう妖鈴に述べた。
「あれは本来僅かな量で毒を消すもの」
「そうね」
 これは妖鈴も知っていた。ユニコーンの角はそれだけの効果があるのだ。だからこそ誰もが欲しがるのである。毒消しには最高のものの一つだからだ。
「それでも貴女の為に一本全ていったのよ」
「私との一夜の為に」
「ええ。その一夜の為にね」
 そう妖鈴に教える。
「それだけの価値があったわ」
「また御礼を言わないといけないわね」
 沙耶香の今の言葉にまたうっすらと笑った。少しずつ死に近付いていっている為にその笑みにも力がなくなってきていた。
「その言葉には」
「本当だから。貴女は最高の美女だったわ」
「有り難う」 
 そうしてまた礼を述べるのだった。
「その言葉も忘れないわ。それで」
「ええ。それで」
「今度は何を使ったのかしら」
「丹薬よ」
 沙耶香の返答はこうであった。
「丹薬ね」
「そう。それを使ったのよ」
 妖鈴の耳元でそれを語る。
「これでわかったわね。それも僅かしかないものを手に入れてね」
「そう。それで私の毒を消していたのね」
「そうでなければ危なかったわ」
「どうやら。私の毒もまだまだだったみたいね」
「いえ、そうではないわ」
 その言葉は否定するのだった。
「もう少しで私も危なかったわ」
「もう少しだったのね。では今は」
「何とかね。丹薬がもっていてくれているだけよ」
 それでも構わずに妖鈴を抱き続ける。まるでそれで何もかも惜しくはないように。

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