25部分:第二十五章
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「その通りよ。何故なら」
ここで瞬間移動をしてみせた。そうして妖鈴の真後ろに立ってみせた。
「まだそんな術を使えるだけの体力があるというのね」
「その理由ももうすぐ話してあげるわ」
振り向いてきた妖鈴に対して答える。彼女はそのまま沙耶香を抱き締めようとしていた。毒に満ちたその身体で。
「それならこれで」
牡丹が彼女の身体に触れる。そうしてその妖美な香りを強くさせる。その香りと共に沙耶香を抱いて死に至らしめようというのだ。
しかしそれよりも沙耶香の方が早かった。もうその右手に白薔薇を持っているのだった。
「さっきの薔薇は囮よ」
「囮だというのね」
「今この時の為に」
己に迫る妖鈴に対して告げる。
「囮にしたのよ。そうしてこの薔薇で」
「その薔薇で」
「チェックメイトね」
一言告げると目を赤く輝かせたうえでその白薔薇を妖鈴の胸に刺した。まるで捧げるように。
黒いドレスの胸に白い花が飾られた。それは全ての終わりを告げる贈り物であった。それを受けて妖鈴の動きが止まった。そうして沙耶香の前にゆっくりと崩れ落ち彼女に抱き締められるのであった。その瞬間にそれまでそこに満ちていた牡丹の花びら達は落ちた。そうして地面に溶けていくように消えていくのであった。まるで雪の様に。
「終わったわね」
「そうね」
沙耶香に抱き締められた妖鈴はまずは彼女の言葉に頷いてみせた。
「見事だったわ。こうして私を抱き締めてくれるなんて」
「言った筈よ。私は美しい女性は粗末にはしないわ」
そう妖鈴に声をかける。
「だからよ。魅力的だったわ」
「有り難う」
あらためて沙耶香に対して礼を述べる。
「闘いの後でそんな優しい言葉をかけてもらったのははじめてよ」
「そしてこれが最後になってしまったけれど」
「最後でも。聞けたのはいいことよ」
うっすらと笑って沙耶香に述べる。
「そうではないかしら」
「それはそうね。ところで聞きたいことはないかしら」
「最後に。そうね」
「ええ。あるわね」
そう妖鈴に対して問うた。
「だから。言ってみて欲しいのだけれど」
「言っていたけれど私は全身あらゆるものが毒なのよ」
それを言う。だからこそ彼女は毒婦と呼ばれてきたのである。そうしてその毒を自在に操り敵を次々と葬ってきた。そうして上海の黒社会を全て手中に収めた。それはもう沙耶香も知っていることであった。
「それこそ髪の毛一本で池の中の鯉達を全て殺してしまえる程のね」
「それは知っているわ」
「それでどうして貴女は平気なのかしら」
彼女が聞きたいのはそこであった。
「私を抱いた時はユニコーンの角だったわね」
「ええ」
その言葉に答える。次第に血の気をなくしていく妖鈴の顔を見ながら。
「それを使ってならわか
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