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黒魔術師松本沙耶香 毒婦篇
24部分:第二十四章
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。彼女は花の中で左手に持つ扇を優雅に扇ぎながら言うのだった。
「この牡丹の香りこそがこの吹雪の真実の恐ろしさ。そして甘さなのよ」
「さらに香りが強くなってきているわね」
「そう。そしてそれは」
「死への誘い」
 妖鈴の幻達がそれぞれの口で述べる。
「これでわかったかしら」
「しかも貴女の紅い薔薇よりもそれは遥かに強いわよ」
「そのようね」 
 沙耶香もそれを感じていた。何故なら。
「私の薔薇達が次々と消えていくわ」
「そうみたいね」
「どうやら」
 沙耶香の言葉通りであった。下にある紅薔薇も放った蒼薔薇も身を護らせている黄薔薇も全て溶けていく。沙耶香は次第に追い詰められようとしていたのだ。
「これは危ないというのかしら」
「はじめてかしら」
 また花吹雪の中から妖鈴の声が聞こえてきた。
「そういうことは」
「別にそうではないけれどね」
 そこまで圧倒的に強いわけではない。彼女もこれまで多くの強敵と戦ってきている。こうしたことは過去何度かあった。だからそれは否定するのだった。
「それでもね。やるわね」
「だからこそこの街の裏を支配できたのよ」
「そうよね。だから」
 沙耶香もその言葉に応える。その間にも薔薇達は消えていく。そうして遂にその残りは僅かとなってしまっていた。
「もうすぐね」
 妖鈴の声が聞こえる。
「これで終わりかしら」
「さて。それはどうかしら」
 だがその言葉にはここでも異議を呈してみせる。
「私は存外諦めが悪いから。これで終わりではないかも知れないわよ」
「そうかしら。もう貴女の花は残り僅かだというのに」
「花の問題ではないのよ」
 沙耶香の言葉はまだしっかりとしていた。その圧倒的な牡丹の赤と毒の中にあっても。だがそれは妖鈴には最後の強がりに聞こえていた。
「何時までもつかしら」
「勝てると思っているのね」
「そうよ。私のこの術で落ちなかった相手はいないわ」
 自信に満ちた言葉であった。
「一人たりともね。この身体の毒もそうだけれど」
「花もなのね」
「あの時は私の毒に耐えて抱くことができたけれど今度はどうかしら」
「今度もよ」
 沙耶香は不敵に笑ってみせた。もう薔薇はなくなってしまった。周りにはもう赤い牡丹の花しかなかった。そして妖鈴の幻影達だけであった。
「貴女を抱いて。そうして勝利を告げてあげるわ」
「それは私がすることよ」
 しかし妖鈴の言葉はここでも変わりはしなかった。
「生憎だけれど」
「そうかしら。それじゃあ」
「動くのかしら」
「その通りよ。それに」
「それに?」
 ふと沙耶香の言葉にふと声を出した。
「何かしら。まだ言葉が言えるのも素晴らしいことだけれど」
「それよ」
 沙耶香は言葉について言ってきたのを聞いて微笑んでみ
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