第二話 たかが一杯。されど一杯。
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ーの孫であり、彼女の父を除けば、ただ一人の正従業員―――香風 智乃は、言うだろう。
曰く、
チノ「あの人は、そこにいるだけで場をあらぬ方向へもっていきます。しかもそれが、本人の意思とは無関係であり、また本人にも予測が出来ない。更には、起こされる事象は、考え得る最悪の事態のさらに斜め上を攻めていきます」
このコメントを聞けば大体の人間が察するだろう。
そう、ココアは所謂、『天然』、という人種なのである。
コーヒーカップがあれば当然のごとく手を滑らせて床に落とし、なにかしらの電子機器があれば思いもよらない発想で故障までの最短コースを突っ切る。
それが彼女、ココアという人間なのである。もはや、彼女のドジは天災といっても過言ではない。
では、ココアの生態が理解できたところで質問だ。
問題。ココアの前に、風見雄二を連れていったら?
―――――結論。怖くて想像したくない。
私は早々に思考を打ち切り、他の問題案件解決に頭を切り替える。深いことはあまり気にせず。さしあたって、今はバイトだ。この案件はいくら思い悩んでいても仕方ない。そもそも、彼にはバイト先を伝えていないのだ。
であれば、ココアと彼の化学反応の結果を心配する必要なんて始めからない。
リゼ「さて、行くとするか。確か、生クリームが切れかかってたな。ついでに、ミルクも買っていくか」
リゼ「よし!今日も気合入れていくぞ」
頬を両手でパンと赤くならない程度に叩き、気合を入れる。
さあ、お仕事の時間だ。
気張っていこうか。
カランカラーン
リゼ「遅くなってすまない。なくなってた生クリーム、それとミルクも買ってきたぞ」
扉を開ければ、今日も喫茶店ラビットハウスの香ばしいコーヒーの香りが鼻をくすぐる。
私は、毎回この瞬間が好きだ。お店に入る前と、出た後のコーヒーの香りが、荒れていた心の波を鎮め、同時に心を癒す。
店を始めたマスターも、そんな時間をお客様に感じて欲しかったに違いない。
学校での出来事はもう、私の心の海の奥底に沈み、もう物音ひとつ鳴らさない。
雄二「この上質な酸味と、高貴な甘み……キリマンジャロか」
チノ「わかりますか!?」
定位置ともいえるカウンターに陣取り、いつもは感情を表に殆ど出さない大人しい少女は、何故か今日に限って興奮した様子で一人のお客と会話に興じている。
織り立てたばかりのシルクかのようなサラサラの白く長い髪を腰まで下ろした、儚げな少女、この子が何を隠そうマスターの孫であり、この店の一人娘、香風チノだ。
雄二「ああ、多少は、な
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