第二話 たかが一杯。されど一杯。
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と口にしかけたが、店の備品を私が私情に流された結果、壊してしまったというのは事実なので、素直に私は頷いた。
タカヒロ「……そうか。なら、コーヒーカップ一個と、チノのコーヒー一杯分だけ彼には働いてもらおうかな。丁度、女の子ばかりで男手が欲しいと思っていたばかりだからね。都合がいい」
これは名案だ、とばかりにタカヒロさんは微笑み、うんうん、と頷いている。
いや、いやいやいや!
リゼ「ちょ、タカヒロさん話聞いてました!?」
チノ「ほんとですか!?」
ココア「わーい、またバイト仲間が増える!これで私、先輩だぁ!!」
それに対し、チノとココアは大賛成。私は待ったをかけたいが、立場上かけられないため、背中に汗をかく事しか出来ず、結果として顔をひくつかせることになってしまった。
タカヒロ「多分、今日一日でカップの分は弁償が効くと思う」
チノ「!」ガーン
(ほっ)
チノは何やら残念がっているようだが、私にとっては棚から338.ラプア弾(対人狙撃用の弾薬)1ダースががひょっこりと出てきたくらいに喜ばしい出来事だ。
だがしかし、その言葉には続きがあった。
タカヒロ「その後のバイトについては、君がよく考えて決めるといい。それでも、よくわからないなら、そうだね……チノの淹れたコーヒー。あれ一杯の為に君がどれだけ働けるか、とでもしておこうかな?」
雄二「…………」
タカヒロさんは、そういって意味深な笑みを残して、また店の奥に戻っていった。
タカヒロさんの決断も、大岡裁きともいえる今回の事案だが、最後に余計な事を言ってくれたものだと私は、内心タカヒロさんに愚痴を吐いた。
ああ、誠に、まっっっことに遺憾ながら、最低今日一日一杯、私の護衛兼、クラスメイトである風見雄二は、ラビットハウスで一緒にバイトをすることになってしまった。
リゼ「おい。一応働く一緒に働くことになったが、ここでは私が先輩であり、教官だ。きちんと私の言う事を……って、聞いているのか?お…い……?」
ぼやいていても、仕方がないので、私は今日一日同僚であり、部下(いや、もともとクライアントなので、私の方が立場は上のはずなのだが)となった彼に呼びかけるが、その時に私は、見てしまった。
いつも無表情。そして、今も無表情。そのはずなのに、
雄二「……ああ、俺はもう、自分の事は自分で決めなければいけないんだったな」
当たり前のことを、当たり前に言っているだけ。それなのに、私にはその顔が、とても脆くて、悲しそうで、同時に、『――――』と感じた。
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