第二話 たかが一杯。されど一杯。
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キーンコーンカーンコーン
夕日が窓から教室内に差し込み、校内放送用のスピーカーがとある合図を学園中に染み渡らせる。
これは、学生の本分である学業とは別の、日常から少しだけ離れた非日常へと緩やかに移行するための合図である。
長い一日が終わり、今まさに学園という檻から放された生徒たちが、校内を闊歩し始める。
各々の門限までの僅かな間ではあるが、太陽が一日の終わりを労うように赤く照らす、幻想的な木組みの家と石畳の街へと意気揚々と乗り出す。
この時間だけは、生徒当人たち以外、誰にも邪魔されることはなく、みなが思い思いの行動をとる。
部活の為に、一目散で教室を飛び出す者、また、しばしの間教室に残り、友人同士で談笑するもの。
その行動、表情、雰囲気はまさに、十人十色、千差万別だ。
人はそんなマジックアワーを、放課後と呼んだ。
そして、そんな様々な色を体現する生徒たちだが、各々の色は違えど、今日は活動へのベクトルはほぼほぼ同一だったらしい。
クラスメイトA「雄二君!何か部活に入る予定はある?因みに私はソフトボール部なんだけど、その気があるなら、今からうちの部に体験入部しに来ない?歓迎するよ?」
クラスメイトB「風見君には汗臭い球遊びなど似合いませんわ!!どうせ入部するのなら、わたくしの所属する演劇部に。部員を挙げて歓迎いたしますわ!!」
クラスメイトC「でさ、私たち、風見君の歓迎会を開こうと思っていているんだけど、どうかな?この後にどこかの喫茶店を貸し切ってさ」
己が色を見せつけんと、彼女たちは奮闘していた。
突如として女子高、しかも所謂『お嬢様学校』に転校してきた学園でただ一人の男子生徒。風見雄二へ、一刻も早く自分という存在を刻み付けるために。
動機やただならぬ熱意は各自誰にも引けを取らぬものの、アプローチ自体の方法はは本当に多彩だ。彼女たちのその色の協演はまさに、刻一刻と模様の変化する万華鏡を覗いているかのようだった。
だがしかし、彼女たちには失礼であることを百も承知で言わせてもらえば。
…………私には全員、群れからはぐれた草食獣であるシマウマを、大勢で取り囲む肉食獣の群れの様にしか見えなかった。
雄二「すまない、気持ちは嬉しいが何せ今日は登校初日。放課後にやらなければいけない案件が立て込んでいてな」
クラスメイトA「そ、そっか。じゃあ仕方ないね」
クラスメイトB「でしたら、無理強いはできませんわね」
彼のNOという返事に素直に応じ、引き下がるクラスメイト達。
相手の事を考え、計算し、その後の関係性を考えた上で、今は撤退がベストの戦術であるとわかっているのだろう。こういった場面で、お嬢様学校ならではの社交スキルの高さがうかがえた。
だが、そん
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