23部分:第二十三章
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れでわかってくれたわね」
「ええ」
沙耶香の言葉に妖しい笑みのままで答える。答えながらその左手に白い木に紫の絹の扇を出す。それで己を優雅に扇ぎながら話を聞いていた。
「わかったわ。面白い術ね」
「他にも色々とあるのだけれどね。これはお気に入りの一つよ」
「それだけのものはあるわね。それじゃあ」
「はじめるのね」
「今度は私が見せる番だから」
妖鈴は述べる。
「だからよ。じゃあ行くわよ」
「わかったわ。場所としては申し分ないわね」
前には豪奢な屋敷があり周囲は牡丹の花で満たされている。紅い牡丹もあれば白い牡丹もある。色様々な牡丹達が咲き乱れその香りが漂う中で二人は対峙しているのであった。
「私はこうした場所で美女と語り合うのが好きなのよ」
「気に入ってもらって何よりだわ」
妖鈴はそれに応えながら今度は右手に白い牡丹を出した。それが術によるものであるのは言うまでもない。
「私も牡丹が好きだから。嬉しい言葉よ」
「牡丹とは合わないでしょうけれど」
沙耶香は沙耶香で花を出してきた。それは薔薇であった。紅薔薇を出したのであった。
「私はこれを使わせてもらうわ」
「薔薇ね」
「ええ」
妖鈴の言葉に頷く。
「無粋だったら悪いけれど」
「別にそうは思わないわ」
沙耶香のその言葉はやわりと否定してみせた。
「牡丹と薔薇なら釣り合いが取れているわ」
「そう言ってもらえると有り難いわ」
「それじゃあはじめましょう」
「わかったわ。それじゃあ」
沙耶香はその紅薔薇を放り投げた。それは忽ちのうちに散り花吹雪となった。そうして辺りを覆っていくのであった。
「それは見せてもらったわね」
妖鈴は動かない。そのまま牡丹と扇を持ったままで紅い吹雪を見ているだけであった。
「豫園で」
「そうだったわね。傀儡の目を通して」
「何時見てもいいものだわ。ただ」
目が光る。黒く妖しく光った。
「私には一度見たものは通用しないのよ」
「そう」
沙耶香はそれを聞いても驚かないのであった。平気な顔で薔薇の吹雪の中に立ち妖鈴に応えるのであった。
「じゃあどうやってこれを破るのかしら」
「その為にあるのがこの白い牡丹」
沙耶香を見据えて微笑みながら答える。
「これで。さあ行くのよ」
牡丹に告げて投げる。それは白い矢となって沙耶香に向かう。
「薔薇の吹雪を消して貴女の世界を作りなさい」
「そう来たのね」
沙耶香は自分に白牡丹が向かって来ても動きはしない。ただ見ているだけであった。
「わかっていると思うけれどこの紅い薔薇は」
「わかっているからこそ白牡丹を投げたのよ」
「白牡丹を」
「そうよ」
目を細めさせて沙耶香に述べる。
「どういうことかわかるかしら」
「詳しいことはわからないわ
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