22部分:第二十二章
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いでしょうね」
うっすらと笑って自分を怪訝な顔で見る道士に対して述べる。
「悪いけれどただここにこうして来たわけではないわ。頼まれたことがあってね」
「そうした世界のですね」
「そういうことよ。それはわかってもらえるのね」
「その気配から」
道士はこう沙耶香に答えるのだった。
「わかります。何かまではあえて御聞きしませんが」
「それがいいわ。聞いたら落ち着いてはいられないでしょうから」
「左様ですか。それではですね」
「ええ」
道士の言葉に応える。
「暫くお待ちを。ですが」
「わかっているわ」
道士の言葉に応えるとすぐにその手に何かを出した。それは黒い羽根であった。
「幸いただの人形ね。目は入ってはいないわ」
そこまで言って前を向いたまま手だけを後ろに振ってその黒い羽根を投げる。そうして後ろにある道みの門のところにいた何者かの胸を貫いたので。貫かれたのは白い服の不気味な外見の女であった。女は胸を羽根に貫かれるとそのまま木の人形となってしまったのであった。
「幸いにね」
「お気付きだったようですね」
「最初からね」
道士に対して答える。
「わかっていたわよ」
「どうやら。かなりの力をお持ちのようで」
「少なくとも今まで生きられるまでにはね」
口元と目元を上げて細めさせて答える。
「それはあるわ」
「そうですか」
「けれど。これからも生きる為に」
「その薬をですか」
「もらえるわね。あの丹薬を」
また道士に対して言う。
「是非共」
「わかりました。それでは」
道士はここまで話したうえで沙耶香に対してその丹薬を渡すことを決めたのであった。丹薬とはかつて仙人になる為、不老長寿になる為に作られてきたものであり方士、道士達が作ってきた。ただし水銀を使ったものが多くこれによる中毒死が後を絶たなかった。秦の始皇帝もこれを飲んでいた為に死期を早めてしまったとさえ言われている。水銀の他にも砒素や様々な毒を使っていたとも言われている。言うまでもなく沙耶香がここで所望しているのはそうしたまやかしのものではない。本物を所望しているのだ。
「暫くお待ちを」
「時間はまだ少しあるから待たせてもらうわ」
こう道士に言うと左手に目をやる。そこには見事な絵があった。宋代のものであろうか。仙女を描いた美麗なものであった。
それを見ながら待つ。それを受け取ると道士に対して一礼する。
「有り難う。これでいいわ」
「それにしても貴女は」
「何かしら」
「これまでにない気配を持っておられますね」
沙耶香をまじまじと見ての言葉であった。
「私は今まで様々な方を見てきましたが貴女のような方ははじめてです」
「よく言われるけれど。この場合はどういうことかしら」
「貴女には何か黒いものが渦巻いていま
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