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ダンジョンにSAO転生者の鍛冶師を求めるのは間違っているだろうか
少女、再登場
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 ヘファイストス様がお帰りになってから適当に武器を七つ作って、箱にほうり込むと、既に時計は午後の六時を指していた。
 一心不乱に打ち込んでいるわけではなかったが、鎚を振るいながら、これからどうしようかとか、アカギミナトのこととか、SAOのときのこととかに思いを巡らせていると、気付いたときには窓から差す陽光は消えて、代わりに部屋の中は炉の炎で真っ赤に染まっていた。
 ずっと同じ姿勢でいたからか、

 「うぅーーーーーーっ」

 と、背伸びをすると、背骨から粉砕骨折したような音が爆ぜた。
 それを聞いて、帰るか、と支度を始めた。
 支度と言っても、炉の炎を消すだけ。
 槌は目に付いたところに放り出したままだ。
 外に出て、扉に鍵をかけて、俺は道すがら夕食を買って、宿への帰路に就いた。


    ◆ ◆ ◆


 翌日。
 いつも通りの時間に起きて、いつも通りに支度をすませて、俺は職場に出勤した。
 が、いつも通りはそこまでだった。

 「遅いのよっ。いつまで待たせるのよ!」

 何故か工房の扉の前に例の少女がいた。

 「お前が来るのが早過ぎるんだよ。俺はいつもこの時間に来てるんだよ」
 「ああ、そう。いいこと聞いたわ」
 「あっ」

 しまった、と思ったけれど、まあ、口から出たことはもうなかったことにできないわけで、気にしないようにしよう。

 「で、返事は?」

 そそくさと扉の鍵を開けている俺の背中に少女が言う。
 その声は何か確信のこもった声音だった。
 何故かわからないけど。

 「直接契約はしない」

 その少女に簡潔に返事した。

 「な、何でよっ!」

 俺がまさか嫌だと言うとは思わなかったのか、驚愕の色を呈した声色で叫んだ。

 「だって、したくないし、できるだけ」
 「できるだけって。少しの同情心もないの、あんた?」

 まるで人格を否定されているようだ。
 ようだ、じゃないか。
 否定されているのか。
 とは言っても、

 「同情心はあるけど、それはそれで、俺は俺だし」
 「それはそれってっ!それにあれだけ渋っといて、できるだけなはずがないじゃない!」
 「いや、できるだけ、だけど」

 俺は地面を蹴り付けながら言う少女に言った。
 本当にできるだけだ。
 ただその『できるだけ』という基準がもしかしたら高いかもしれない。

 「なら、何処までが、できるだけなのよっ」
 「殺されるんだったらする」
 「はっ?」

 案の定、俺の基準を訊いて、口を開けたまま固まった。

 「死ぬことだけは嫌だからな」
 「いや、それは誰だってそうでしょっ!」

 少女は固まっていたけれど、俺の言葉ではっとして叫んだ。


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