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優柔不断な短編集
妄想恋愛物1 『一目惚れ』
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 ―――それは『一目惚れ』だった。


 俺が彼女と出会ったのは、高二の春。ちょうど学年が一つ上がって、クラス替えをした時だった。

 肩まで掛からない、少しウェーブのある髪。身長は俺の頭一個分ぐらい下。見た目は完全にタイプだ。
 黙っているとどこか清楚な雰囲気を醸し出すが、その実友達と一緒にいれば眩しいぐらいの笑顔を見せることが多々ある。一年の時に同じクラスだった奴曰く、運動はそこそこできるらしい。そこらへんのギャップも、なんとなくいいと思う。

 因みに勉強の方はかなりできるらしい。一年の頃はクラス順位で、常に五本の指に入っていたという。俺とは全く違う。


 ……あっ、俺のことをまだ話してなかったな。

 俺はというと、完全にバリバリの体育会系だ。
 小学三年か四年の時から続けて、高校でもテニス部に所属している。まぁ上手いか下手か、っていうと……練習試合に出れる程度には。たぶん同学年の中だと負けないと思う。

 で、モテるかモテないかでいうと……この年になって一度も彼女ができたことがない、とだけ言っておこう。
 い、いや、決して自分がブサイクの領域にいるとは思ってはいないんだ! バレンタインに女友達からチョコをもらう、なんてことは多々あったから!

 ……といっても、義理チョコや友チョコの範疇だったけどな。
  
 ま、まぁそれはさておき!その彼女が気になってること……端的に言えば、好きだってことをコミュ力が高い友人に話したところ、1ヶ月も経たないうちに会話が自然とできるようになった。
 だからまぁ、多分顔ぐらいは覚えてもらえてると…思う……いや、思いたいなぁ……なんて。


 それでだな……


「告ろうと、思うんだ…」

「それはまた急な話だな」


 俺の言葉にそう言って、彼は弁当の飯を口にかき込む。
 もぐもぐと咀嚼し、口の中の物をしっかり飲み込んでから、口を開いた。


「でも、まだ早いんじゃない? 顔を合わせて知り合って、まだ1ヶ月ぐらいだ。もう少し相手の事を知って、自分の事を知ってもらってからでも遅くないと思うぜ?」


 そう言い切ると、手にぶら下げていたトマトを口にヘタごと口に放り込む。

 確かに、こいつの言う通りだ。俺達はまだ知り合って間もない。もう少し時間をかける方が堅実的かもしれない。

 でも……


「そんなの、付き合ってからでもできるじゃないか」

「…振られたら、どうすんだ?」

「それは……そのときに考える…と思う」


 少なくとも、気持ちを伝えることは悪いことじゃない筈だ。何も言わないのは、逆に損だ。
 とりあえず振られる事は考えない。振られたら、そのときはそのときだ。


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