19部分:第十九章
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と酷い侮蔑の言葉である。実際にイギリスの料理は他の国の人間が作れば食べられるものになると言われている。あれだけの繁栄でも彼等は料理というものの造詣にはあまり関心がなかったようなのだ。王室でもグルメというのはあまり聞かない国である。
「見事なまでに」
「ステーキもかしら」
「イギリス人の焼いたステーキなぞ」
マスターはまた苦笑いを浮かべて述べてきた。
「とても食べられたものではありません」
「そうね。あのステーキはね」
沙耶香はその言葉にも笑みを浮かべてみせるのであった。
「残念だけれど美味しいというのには抵抗があるわ」
「そうです。実はここでイギリス人のステーキを御馳走になったのですよ」
「それはまた奇遇ね」
「悪い意味で。その結果が」
「最悪だったのね」
「肉は黒焦げでソースは滅茶苦茶な作りでした」
マスターはイギリス人が焼いたそのステーキをこう酷評するのであった。
「もう何もかもが」
「そうなのよね。ロンドンでは結局外で満足したのは一つしかなかったわ」
「満足したものがあったのですか!?」
「いえ、一つじゃなかったわ」
だがすぐにそれはいい意味で否定してみせてきた。
「二つね」
「二つもあったのですか」
「さっき言ったお酒と女の子よ」
妖美に笑って述べてみせてきた。
「その二つね」
「お客さんはそっちの人なんですね」
マスターは沙耶香の嗜好について言及してきた。つまり彼女がレズビアンであると言いたいのである。
「そうではないでしょうか」
「残念だけれど違うわ」
しかしそれはすぐに否定する。またしても否定であった。
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