暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜Another story〜
SAO編
第103話 血盟騎士団・リュウキ
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 でも……、そんな中でも時折思う事はあった。この世界に来て……色々な事があった。
 初めて、仲間が出来た事の喜び、様々な事をして得られた楽しい事。レイナと言う女性に出会えたと言うかけがえの無い事。……そして辛い事も然りだ。

――……まるで夢の中にいる様な感覚。

 眼を凝らせば、確かに視えるんだけれど、時折、世界が、大切な人たちの姿が、まるでピントがズレたかの様になる。≪世界≫そのものがピンボケをしているかの様な感覚に陥る事があったんだ。

 戦闘中にそんな事になれば、問題があるが、それは幸いながら無かった。

 その現象が起こるのは……、特に、自分が幸せだと感じている時。まるでこれが、現実ではない、現実感が無いと、とふと思ってしまった時。つまり、レイナと共にいる時によく起こっていたんだ。


「……リュウキ君?」

 レイナは、自分の腰の辺りに手を回し抱きしめてくれているリュウキの手を取った。その手は僅かだけれど……震えている事にレイナは気がついたんだ。

「その、どうかしたの……?」

 でもそれは、本当に震えていたかどうか、解らない程のものだった。僅かな揺らぎであり、血が脈打つその震えよりも小さいものだった。だけど、確かにレイナには感じ取れたんだ。僅かだけど、リュウキが震えている事に。

「……え?」

 リュウキ自身には自覚があるが、震えている事には気づいていなかった。なのに、彼女にはわかったようだった。

「リュウキ君……、何か悩みがあるの?」

 レイナは、リュウキの顔を覗き込んだ。そのリュウキの顔を見て、レイナは自分が感じた事が間違いないと確信した。それを確信したと同時に。

「私……、リュウキ君に不安にさせる事……やっぱりしてるのかな」

 レイナは、少し不安そうにそう聞いていた。
 リュウキの事をおいて、自分だけ、はしゃいでいたから。自分だけが楽しんでいただけだと思ってしまったから。

「……違う。違うよ。そんな事無いさ」

 リュウキはそのレイナの言葉を聞いて直ぐに否定した。笑顔を見せて。

「ほんと……? でも、リュウキ君少し震えているみたいだったから、心配になって……」

 レイナは、リュウキの頬にそっと手を宛てがいながらそう呟く。リュウキは、レイナからそう聞いて、目を見開いていた。

――……彼女の前では隠し事は出来ない。何でもお見通しなのだろうか。

 リュウキはこの時心底そう思っていた。自分の心の僅かな機微をも感じ取ってくれているんだから。
心まで見てくれている、心配をしてくれている、その事が本当に嬉しかったから。

――……でも、それ以上に怖い事があると、今自分自身を見つめ直せられてもいた。


「……違うんだレイナ」
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