18部分:第十八章
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それはなくなってしまったと老婆に告げる。
「あの毒を抑えるのには尋常な量が必要ではなかったから」
「まさか一本全て使ったのか」
「一夜の為にね」
うっすらと笑ってそう述べる。
「使ったわ。それも全て」
「そこまでして寝るのがさらにわからん」
老婆はまた呆れた言葉を述べて首を捻った。
「女なら他にもいるじゃろうに」
「花はその花一つしかないものよ」
老婆のその言葉に対してまた言葉を返す沙耶香であった。
「それを愛でるのが当然ではなくて。美を愛するのなら」
「主の考えは幾ら聞いてもわからぬ。しかしじゃ」
老婆はこれ以上話しても自分にとっては何にもならないと思ったのか話を打ち切ることにしたそうして沙耶香に対して問うのであった。
「ユニコーンの角はなくなったのじゃな」
「それは本当よ」
平然として述べる。
「奇麗にね」
「それで後はどうするのじゃ?」
老婆はそこまで聞いて怪訝な顔で沙耶香に対して問うのであった。
「毒に対しては。ユニコーンの角程のものはわしも持っておらんぞ」
「安心していいわ、それに関してはね」
「もう駒は用意しておるのか」
「チェスにおいて駒は常に用意しておくものよ」
またしても笑って述べるのだった。
「必要な時に備えてね」
「それを出す時を楽しみながらか」
「わかっているのね。それを出す時が楽しいのよ」
また目を細めさせる。細めさせた目には妖しい光が宿っていた。
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