16部分:第十六章
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女にまずはこう答えてきた。
「そうしたものを楽しむ主義なのよ」
「そうした貴女から見てどうだったかしら」
「絶品ね」
一言で評する。
「おかげで満足させてもらったわ」
「そう、その言葉心に留めておくわ」
妖鈴は今の沙耶香の評価に口元を緩ませた。
「店の者にも伝えておくわ。限られた人間しか私の存在は知らないけれどね」
「貴女の存在をね」
「ええ、私は闇に咲く花」
その闇の笑みで述べる。
「だから。それもまた当然のことよ」
「闇の花を愛でるのは限られた存在だけね」
「見るだけでなく愛するのは」
また妖鈴は言う。
「さらに限られているけれどね」
「そして私は」
「ええ、特別にね」
沙耶香の顔を見て笑う。もう睦言ははじまっていると言えた。
「私と寝られるのよ」
「それは特別なのね」
「その女と寝られるということはそれだけで最高の幸せだ」
ふと何処かの哲学者が言うような言葉を口にする。それは中国というよりはフランスめいているがそれでもこの魔都には妙に似合っていた。
「誰かの言葉よ」
「知らないわね」
沙耶香はうっすらと笑ってこう言葉を返した。
「そんな言葉は」
「そうなの」
「私は美しい女性なら、自分の気に入った女性なら」
ふとした弾みの様に語るのであった。
「誰でもいいわ。気に入ったのならね」
「なら私はどうかしら」
「花は好きよ」
答えずに花を出すのであった。
「黒い花もね」
「言うわね。それじゃあ」
「ええ。丁度食べ終わったし」
見ればその通りであった。沙耶香は遂に酒も料理も全て食べ終えたのだ。かなりの健啖家であるがそれを全く意に介していないようである。
「行きましょう。場所は」
「ホテルを知っているわ」
妖鈴から場所を言ってきた。
「というか。楼だけれどね」
「またそれは風情があるわね」
「楼は好きかしら」
「嫌いじゃないわ」
沙耶香は笑ったまま答える。彼女は特に中国文化に耽溺しているというわけではない。だがそれでもその美を見る目はあるのである。だからこそ断りはしなかったのだ。
「むしろ。そこで二人で過ごすというのは」
「いいものだと思うけれど」
「そうね。その通りよ」
また笑って妖鈴に答える。
「それじゃあ今から」
「ええ。一夜だけだけれど楽しい夜も」
二人はこう言い合って店を後にした。そうして青い屋根の紅の楼閣において一夜を過ごした。中華風の白いシーツと赤い装飾のベッドの中に沙耶香はいた。その横には妖鈴もいる。
沙耶香は今は髪を解いてはいなかった。上にあげたままである。スーツは脱ぎネクタイも外している。白いブラウスはボタンを全て外しており白く大きな胸をはだけさせてベッドの中にいた。隣に寝ている妖鈴は全裸だ。二人はそこで並
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