15部分:第十五章
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のは。李妖鈴であった。凄みのある艶をたたえて沙耶香の前に座るのであった。その姿はまるで闇に舞う蝶の様であった。
「私が座っても取り乱さないのね」
「何故取り乱す必要があるのかしら」
食事を楽しみながら妖鈴に問う。特に動じたところはない。
「想定していたことだから」
「ここに私がいるということが?」
「そうよ。気配でわかったわ」
また述べる。
「貴女のその禍々しい気配がね。店の中に入ると」
「隠してはいなかったけれど」
自分でもそれを言うのだった。
「そうだったのね。私にも貴女が来たってわかったわ」
「私の気配で?」
「いえ」
その言葉は笑って否定する。
「違うわ。恋心よ」
両肘をテーブルの上に置き手と手を組み合わせる。その上に整った形の顎を置いて沙耶香に対して言うのだった。
「貴女へのね」
「あら、貴女も同じなのね」
沙耶香はその言葉を受けて微笑む。
「私と同じなのね。同じ趣味を持つ者」
「そうね。それを感じたからここに来たのよ」
「そうだったの。ところで」
妖鈴にここで言葉をかける。
「その杏露酒貰えるかしら」
「これを注文していたわね」
「ええ。だから欲しいのだけれど」
こう妖鈴に対して言う。
「駄目かしら」
「いえ、いいわ」
笑って沙耶香に答える。
「是非共。愛しい方に飲んでもらいたいわ」
「私に入れてくれるのね」
「いいかしら」
「いいわ。何故なら」
ここで笑ってまた妖鈴に対して言う。
「今はユニコーンの角を飲んでいるから。大丈夫よ」
「また随分と用意がいいわね」
「少しだけならどんな毒も効果がないわ」
そう妖鈴に対して述べる。
「少しだけなら。つまり」
「ふふふ。いいのね」
妖鈴には今の沙耶香の言葉の意味がはっきりとわかった。わかっているからこそ同じ笑みを見せ合うのであった。
「それなら。楽しくね」
「まさか乗るとは思わなかったわ」
「私はそういうことには構わないのよ」
同じ妖しい笑みを浮かべ合っている。その中で言葉を交あわせるのであった。
「むしろ。楽しいわ」
「楽しいのね」
「敵と寝るいうのも」
「確かにね」
沙耶香はここで小龍包を口に含んだ。すると蟹の味が濃厚に入ったスープが口の中に溢れ出る。その熱さと美味さを味わいながら妖鈴と話すのであった。
「それでも。まだよ」
「まだなの」
妖鈴はその言葉に少し寂しそうな声を出してきた。
「またそれはどうして」
「まだ食べているからよ」
見ればその通りであった。沙耶香はまだ食べている。相変わらず上海の蟹料理を堪能していた。既にかなり食べていてもう少しだがそれでも食べていることには変わりない。
「食べ終わってから行きましょう」
「わかったわ」
妖鈴もそ
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