13部分:第十三章
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った。沙耶香はそれを男に対して問うのであった。
「人間なのかしら。それとも」
「少なくとも人間です」
男はそれは保障してきた。
「それについては御安心下さい」
「私にとってはどちらでもいいのだけれど」
沙耶香にとってはそうであった。彼女はこれまで多くの異形の者達と対峙してきている。その彼女にとって妖鈴が人間かどうかというのはさして問題ではなかったのだ。
「それならそれでやり方があるわ」
「ですか」
「ええ。それでも術を使えるというのね」
「左様です」
男の返答は簡潔であった。
「それもかなりのものが」
「そもそも素性が全くわからないそうね」
沙耶香は今度はそこを聞いたのであった。無論これで男から素性が聞けるとは思ってはいない。だがそれでも聞いたのである。これは駆け引きであった。
「彼女に関しては」
「何時何処から来て」
男はそれを受けて述べはじめた。
「何者かさえ全くわかってはいません。年齢さえも」
「写真を見る限りでは若いようだけれど」
「それも何処まで」
男は懐疑的に述べてみせてきた。
「外見なぞ術でどうとでもなるものですし」
「変化の可能性もあるというのかしら」
「いえ、彼女は間違いなく人間です」
それは保障してきた。
「それだけは確かです」
「そうなの。人間なのね。これも確かめてはいるけれど」
「信じられませんか?」
「そうは言ってはいないわ」
これについては否定する。
「人間も異形の存在と変わりはしないのだから」
「それが貴方のお考えですか」
「ええ」
男の言葉にここでも頷いてみせた。
「そうよ。それでだけれど」
「はい」
「彼女はこの上海の暗黒街を完全に掌握しているのね」
「その通りです」
男は顔を伏せて答えた。
「何もかも。彼女の思いにならないものはありません」
「表にも。相当な影響力を持っているでしょうね」
「まさに女帝です」
こう表現されたのであった。
「絶対的な権力を持ち。思いのままにならないものは何一つとしてありません」
「それでもそれを不満に思っている勢力はあるのね」
「当然です。私もまた」
自分もそうであると言う。このことから沙耶香は妖鈴が恐怖や力によって暗黒街を支配していることを知った。裏の世界の支配とは暴力が非常に大きな比重を占めているものであるがそれでも彼女のそれはその裏の世界の基準からも大きく逸脱したものであることがわかったのだ。
「その中の一人です」
「だからこそ私に会っている」
「そうです。仕事を依頼したのも」
「貴方と同志達ね」
「皆既に命を落としています」
男はここでまた顔を伏せた。サングラスをかけてはいるがそれでもそこにある表情を隠そうとしているのがわかる。
「私もまた。長くは生きら
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