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ソードアート・オンライン〜Another story〜
SAO編
第97話 ユニークスキル
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リトは全く別の事を、考えていた。胸の奥底に強烈な渇望としか思えない感情が生まれた事に驚愕していたんだ。
――自分は……ソロプレイヤーキリトは、《卑怯者》なんだ。
なぜならば、この世界で生き残る為に、他のプレイヤーを全員見捨てた。あの第1層でキバオウが言った言葉は全て自分に当てはまる。……全てが始まろうとしていた時に、此処で出来た友人すら背を向け立ち去ってしまったんだ。
――……今回の件で、自分は感謝されているかもしれないけれど……、真に感謝すべきなのは自分ではない。この《黒き剣士》じゃない。
その色が連想させるのは、決して良いものばかりじゃない。黒と言う色は……。
――……卑怯者の俺じゃない。 目の前にいる全く対照的な色を持つ男なんだ。《白銀の剣士》なんだ。
何故なら、この男は、最初から誰一人として見捨てなかった。……ビーターと言う汚名を着た事だって、全部他のプレイヤーの為なんだから。
――……自分とは違うんだ……。
葛藤は暫くキリトの中で続いていた。時間にしたら短いが……随分と体感は長く感じていた。
「ふん……」
いつの間にか、気づかない内に、リュウキはレイナを抱えたまま、立ち上がっていた。レイナも……どうやら笑顔を見せられる程心身ともに立て直したようだった。
何より、姉の姿を、様子を見て。
リュウキは、人差し指の第二間接を折り曲げ、その部分でノックするようにこつんとキリトの額を叩く。
「……アスナは、ああ言ってるんだぞ?……返事を返してやれよ」
そう言ってリュウキは笑った。まるで、こっちの考えを全てわかっている。と言わんばかりの顔だった。そして……何より心が軽くなるんだ。
「……やっぱり、敵わないな」
キリトはそう呟くと、アスナに抱いている右手に力をいれた。
「……判った」
そう、短く一言。その返答にアスナも無言で頷いた。僅かに彼女の身体はまた震えているが。それは、今までの震えとは違っていた。
アスナは握られている手の感触をずっと忘れない。
それは……決して忘れてはいけないものだから。
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