第一章
[2]次話
ラテン=ヴァンパイア
スペインの港町バルセロナ。オペラ歌手のモンセラート=カバリエ、ホセ=カレーラスの出身地でありオリンピックも開かれたことがある。
この街にだ、今は一人の男と従者が降り立った。
男は飛行機から大地に降り立ってだ、後ろにいる従者に言った。
「暑いな」
「はい、スペインですから」
従者は男にすぐに答えた。
「暑いのもです」
「当然だな」
「ルーマニアと比べると」
「祖国とはか」
「比較になりません」
比べるとそうなるというのだ。
「暑くそして」
「日光がな」
「それが問題ですね」
「いや、我が血族は実はだ」
どうかとも言う男だった。
「日光は苦手だが」
「それでもですね」
「これを浴びて死ぬことはない」
その日光を見上げての言葉だ。
「それはないな」
「はい、我が偉大なる伯爵、夫人も」
「あの方々にしてもだ」
「日光の下におられましたし」
「私もだ」
男は言い切った。
「そうしたことはない」
「旦那様もまた」
「そなたもな」
二人共というのだ。
「これでは死なない、だが」
「はい、今の服装では」
「暑い」
とにかくという口調での言葉だった。
「これはな」
「耐えられませんね」
「まずはここに買った屋敷に入る」
「そしてですね」
「着替える」
こうも言った。
「まずはな」
「では参りましょう」
「その屋敷にな」
こう二人で話してだ。共にそのバルセロナでの屋敷に向かった。だがその屋敷を見てだ。二人はまた言った。
「これは」
「かなり違いますね」
「うむ、私は古城を考えていたが」
ルーマニアにある様な、だ。
「重厚なものだと思っていた」
「しかしですね」
「白いな」
「はい、しかも赤が多く」
その屋根がだ、従者は屋根も見て言った。
「壁も薄く」
「庭にはな」
「緑の木々にです」
「花も多いな」
「それも非常に」
左右対称の見事な庭にはだった、赤や黄色の鮮やかな花達が咲き誇っていた。そして空と遠くに見える海は青く澄んでいる。
その風景まで観てだ、男はいった。
「このイオン=モスコヴィッチの家には」
「いささかですね」
「そう思うな、そなたも」
「はい、私もです」
従者であるマルセル=ハスキルも答えた。
「モスコヴィッチ侯爵家のご当主の屋敷には」
「明る過ぎるな」
「よりです」
「そうだ」
両者は青白い肌と血走った目を持つ顔を見合わせて話した、二人の唇からは鋭い犬歯が牙そのものとなって出ている。
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