第三章
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「一体」
「うん、聞きたいことがあるけれど」
何もされないことはわかっていても警戒は出ていた、何しろこうして話すことも滅多にない相手であるからだ。
「田中君ってさ」
「猫好き?」
こうダイレクトに問うた。
「ひょっとして」
「そうなの?」
「猫!?」
その問いにだ、圭一はというと。
その表情を一変させてだ、急に嬉しそうになってだ。
不意にだ、こうべらべらと喋りだしたのだった。
「いや、猫っていいよね」
「可愛くてね」
「しかもやんちゃでね」
「けれどそれがまたよくて」
「いや、うち猫十匹いるけれど」
「どの猫も可愛くてね」
「皆僕が名付けたんだ」
身振り手振りを入れて話しだしたのである。
「スコティッシュフォールドもいるしマンチカンもね」
「あっ、三毛猫もいるよ」
「今度アメリカンショートヘア貰ったんだ」
「野良猫も引き取ることにしてるんだ」
「いや、どの猫もいいよね」
「可愛いよね」
この彼の熱い言葉を聞いてだ、クラスメイト達はわかった。
そしてだ、それぞれ心の中で言った。
(これは)
(ガチね)
(もう根っからの猫好き)
(スイッチ入ったわね)
(普段とは全然違うし)
(こうした一面もあるんだ)
(意外過ぎ)
内心引くものがあった、だが。
ここでだ、彼等は圭一に言うのだった。
「あの、じゃあね」
「今度田中君のお家行っていい?」
「それで猫ちゃん達見たいけれど」
「いいか?」
「是非来てよ」
圭一は満面の笑みで答えた。
「そうしてうちの子達見てよ」
「猫は子供なんだ」
「田中君のお家の」
「そうだよ、僕の弟であり妹だよ」
まさにそうした存在だというのだ。
「掛け替えのないね」
「ううん、じゃあ」
「それじゃあね」
「今度行かせてもらうわね」
「皆で」
「嬉しいよ、皆にもあの子達を見てもらえるなんて」
両手を開いてだ、圭一は明るく言った。
「ありのままのあの子達を見てね」
「うん、じゃあね」
「皆で行くわね」
「それじゃあね」
「田中君のお家に」
「それじゃあね」
やはりだ、圭一は満面の笑顔で応えるのだった。そして。
彼等は圭一とそのお邪魔する日について細かい打ち合わせをしてだった、二週間後の日曜に行くことにした。
だがその話の時もだ、彼は。
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